2007年2月14日(水)「しんぶん赤旗」
ボロもうけを社会に還元せよ
トヨタ包む1600人の声
労働者・下請け・公害患者ら行動
「トヨタはボロもうけを社会に還元せよ」―愛知県豊田市にあるトヨタ自動車の本社や工場を十二日、約千六百人の唱和が包みました。全労連や愛労連などの実行委員会による二十八回目の「トヨタ総行動」。
「二兆円もの営業利益を見込むトップ企業による賃金抑制や非正規雇用の増大、過酷な単価切り下げは許せない」と各地から労働者や中小業者、大気汚染公害患者らが参加。「トヨタは正社員を増やせ」「公害裁判の全面解決にイニシアチブを果たせ」と訴え、本社要請や宣伝、集会にと終日行動しました。
市内の公園で開いた集会では、全労連の小田川義和事務局長と愛労連の羽根克明議長が「トヨタが社会的責任を果たさずにいることが、他の企業にも影響し、貧困にあえぐ労働者をつくり出している」と訴えました。
トヨタ高岡工場で働く男性(59)は、下請けへの過酷なコスト削減と低賃金の若者の犠牲の上に築いたボロもうけだと告発。東京大気汚染公害訴訟の西順司原告団長(74)は、トヨタら被告企業が謝罪と損害賠償を拒んでいると批判し、全面解決を求めました。
トヨタ系列会社で昨年、労組を結成したJMIU(全日本金属情報機器労組)組合員の男性(55)は初の春闘。「十二時間の二交代で月七十時間の残業をしても、生活は楽にならない。残業しなくても生活できる賃金にしたい」と語りました。
二十代でぜんそくを患った東京大気汚染訴訟の原告の女性(63)は、「入院のたびに仕事を辞め、発作の苦しみに自殺も考えたこともある。トヨタは謝罪してほしい」と話していました。
下請け単価、引き下げ限界
「命削れというのか」
労働者告発
「トヨタは二兆円ももうけながら下請けをいじめ抜く。これじゃ下請けは生きていけない」
トヨタの三次下請けで自動車部品を製造する零細企業(愛知県内)で働くAさん(57)が、トヨタグループの過酷な下請けいじめを本紙に告発しました。
家族の生活はギリギリ水準
従業員十数人のうち正社員はAさんだけ。あとは定年退職した高齢者のパートばかりです。
二次下請けは「トヨタがどんどん単価を下げてくる。協力してくれ」といって、半年ごとに単価を1・2%ずつ引き下げるよう求めてきます。ある部品は、一円の単価がこの八年間で二割も切り下げられました。
そのしわ寄せを受け、Aさんの手取りは、約二十二万円。一時金は八年前からゼロ。パートの時間給は七百三十円。県内の最低賃金六百九十四円を少し上回るだけです。
Aさんの家計は、時給八百五十円のパートで働く妻とあわせて総収入が二百九十五万円。大学生を含む子ども二人を育てるには、いくら節約してもギリギリの水準です。
「正社員が以前はほかに二人いましたが、パートに変えられました。蛍光灯が切れても交換されずそのままです。トヨタの過酷な単価削減は“乾いたぞうきんを絞る”といわれたけど、もう絞るものがない。命を削るしかないのが実態です」
もう黙っていられないとAさんはJMIU(全日本金属情報機器労組)に入り、トヨタの下請けいじめをやめさせて、まともな生活ができるような労働条件を求めてがんばっています。
どんな厳しい注文でもトヨタを支えてるんだという誇りをもってこたえてきました。それだけに理不尽な下請けいじめに対して怒りと悔しさがこみあげてきて、目頭に涙があふれてきたAさん。
「ここまでやるなんて許せない。ボロもうけを下請けに還元せよ、といいたい。下請け企業の労働者がまともな生活ができるように頑張りたい」
2割強しめる非正規労働者
トヨタ総行動には、徳島県藍住町にあるトヨタ系列の光洋シーリングテクノで昨年、偽装請負をやめさせて直接雇用を実現させるたたかいの先頭にたってきた矢部浩史さん(42)の姿がありました。
非正規労働者はトヨタ本体で約八万四千人の従業員の二割強を占め、下請け企業ではさらに四割―五割を占めるまでになっています。
矢部さんたちJMIU徳島地域支部では、直接雇用を実現したものの、“年収二百万円では暮らしていけない”として、賃金の大幅引き上げを求めてたたかっています。
「うちでつくる部品の単価も二割減らされました。トヨタは違法な偽装請負には目をつむり、単価を買いたたいて利益を吸い上げている。こんな無法は許せませんよ。トヨタはまず自ら、ボロもうけを労働者や下請けに還元すべきです。子会社や下請け企業が労働者の生活を守ることなど社会的責任を果たしていけるよう、親会社として責任を負うべきです」(酒井慎太郎)