2007年2月21日(水)「しんぶん赤旗」
自・公・民・社民議員 これが海外視察の実態
税金で観光地・遺跡めぐり
調査を名目にカジノ遊び
「税金のムダ遣いではないか」と批判の強い地方議員の「海外視察」。報告書をみると――。
山梨
「世界遺産と市民生活」「グランドキャニオン―世界遺産視察」「北欧にある…世界遺産」―山梨県の海外視察の大義名分は、富士山の世界遺産登録の推進ですが、内容は観光旅行と化しています。
〇五年七月、自民、公明の四県議は、北欧四カ国の世界遺産や名所を歴訪(一人当たり九十万円)し、「フィヨルドは、穏やかな水面と切りたった岩が美しい雄大な自然を満喫できる」(ノルウェー)と。同年八月、チュニジアを“旅”した自民県議の報告書の題名はズバリ、「チュニジア共和国―世界遺産の旅」。「6日間で1700キロ、6つの世界遺産」を踏破と誇り、観光ガイドのような内容です。
〇三年十月に視察にいった自民県議の報告書は「カナダの歴史と自然」。「紅葉も見事」「すべてが息をのむ美しさ」といった感想が並び、「カナディアンロッキーでの自然保護には…並々ならぬ努力が必要であっただろう」と書かれているものの、その「努力」内容にはふれていません。
佐賀
グランドキャニオンは、アメリカ・アリゾナ州の人気観光地です。〇四年、佐賀県の自民党県議が、八月、九月と二回に分け、計十七人が北米を視察(一人あたり約百十万円、同約九十七万円)。両視察にグランドキャニオン国立公園訪問が組みこまれました。
報告書では、なぜ同時期に同じ場所に“視察”にいくのか説明はありませんが、目的を八月組が「自然と来訪者の共存などについて調査」と書けば、九月組も「自然と来訪者の共存について調査」。報告の全体がほとんど一致し、一字一句違わない個所も少なくありません。
〇五年には六月と七月に自民、社民の十二県議が「欧州行政視察」(同約百六万円、同約百八万円)。六月組はイタリア・ポンペイ遺跡、七月組はギリシャ・パルテノン神殿も視察しています。どちらも「吉野ケ里歴史公園の整備や活用方法の一助」を目的に掲げますが、報告の大半は遺跡の説明。「2500年以上の前の建造物とは思えないほどすばらしい」(パルテノン)などの感想で、どう「一助」になったのか一言もありません。
青森
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青森県では、二〇〇五年五月、自民県議六人がイタリア視察(一人あたり百万円)しましたが、報告書はたったの九ページ、その半分が写真です。視察先のリグーリア州農業局の報告で、農業について触れているのはわずかに三行。大半を農業と関係のない話題で埋めています。
同県の民主党県議三人も、〇四年七月の欧州視察(同百万円)でエッフェル塔、凱旋(がいせん)門、シャンゼリゼ通り、ルーブル美術館、ベルサイユ宮殿などなど、パリの名所をぐるり“視察”。報告書には行き先の名所の写真があるだけで、まるで観光旅行。同年十一月、公明県議は、十一日間にロンドン、ローマ、パリ、バルセロナを回るも、実際の視察は四日間、各一時間半から二時間です(同約八十四万円)。
名古屋
二〇〇四年八月、名古屋市の自民、民主の市議七人が、北米視察の途中ラスベガスに立ち寄りカジノに興じていたことが発覚、新聞は「北米視察でカジノ遊び」(「毎日」同年九月六日付)、「市議7人、視察中にカジノ」(「読売」同七日付)と報じました。
視察には、環境保護や障害者福祉などの調査を名目に、自民、民主、公明から十五人が参加(一人あたり百二十万円)。視察五日目、計画にはロサンゼルス泊、市内視察と書かれていますが、七市議は飛行機でラスベガスに赴き一泊、翌日を自由行動としました。
七市議は、「カジノを楽しんだが、プライベートな時間で問題ない」(中日新聞、同六日付)と開き直り、「今回の視察は…特にカジノ都市のない日本人には学ぶ事の多い都市」だったと、カジノ遊興を“視察”とすり替える報告を作成、批判をかわそうとしました。
しかし、当初の目的にはカジノ都市の調査は入っていません。ラスベガスを、「カジノで生計をたてている、世界的にも有名で立派な都市」と書きたてる七市議の結論は、「中部国際空港近郊のカジノ構想」というものです。
札幌
札幌市では、今年四月の改選で引退を表明している自民党市議四人が、一人約六十七万円の市税を使って欧州視察をしたことが、引退旅行と市民の怒りを買っています。
昨年七月、四市議は「札幌夏季五輪の招致に向けた準備」を理由に、二〇〇四年開催地のギリシャ・アテネ、一二年開催予定地のイギリス・ロンドンを訪問しました。
夏季五輪について、札幌市長は「一六年、二〇年の夏季五輪招致はおこなわない」(昨年二月)と表明しており、「五輪断念なのに海外視察」(「読売」)と各紙がいっせいに報道。市民からも「〇五年にも、自民党市議が同様の名目でロンドンに行っている」「引退観光旅行ではないか」と批判があがりました。
〇二年には、公明党四市議のオーストラリア視察(一人あたり約八十四万円)の旅費が不当に高額として、住民監査請求を受けています。市が移動費、雑費の精算を再度おこなった結果、一人あたり約十六万円の過払いが判明、返還させる事件が起きています。
共産党 中止・見直し求める
日本共産党は、いっせい地方選挙政策で「海外旅行化している海外視察は中止・見直しをもとめます」ときっぱり公約し、各自治体ごとに、観光旅行まがいの海外視察について、あり方を見直すよう求めています。
名古屋市では、任期中に一回参加する慣例的な海外視察はふさわしくないと、共産党市議団は参加せず、廃止を提案しています。
熊本県では、昨年九月に共産党県委員会が「海外視察の凍結、支度料の速やかな廃止」を求める申し入れをおこない、視察に行く際、約四万―十万円を議員に支給する支度料制度が廃止となりました。
福岡市の共産党市議団は、海外視察の調査結果を九日に発表し「市民には増税や福祉切り捨てが押しつけられ、格差や貧困が広がっているなか、議員だけが特権を温存するなど許されない。海外視察をやめるべきだ」と求めています。
公明党 「自粛」決議はどこに?
「海外視察」を続ける公明党ですが、前回いっせい地方選挙を前にした二〇〇三年一月には、全国代表者会議で「海外視察の自粛」を決議していました。それをうけて聖教新聞は同年二月六日付で、「『遊び半分の海外視察』を全廃せよ」と題する座談会を掲載し、公明党に注文をつけていました。
そこでは、「要するに“まず公明党が、地方議会のレベルから海外視察をやめる”ということだな」「だいたい議員の海外視察といえば、悪評ふんぷんだった」「この不景気に、何十万円、何百万円も使って、何が『視察』だ、偉そうに」「早い話が『観光旅行』『物見遊山』。血税を使った『遊び』『息抜き』じゃないか」「まったくの『税金泥棒』だ」と痛烈に批判しています。
四年前の海外視察「自粛」決議も結局は、選挙目当てのパフォーマンスだったのでしょうか?