2007年2月24日(土)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト
正規雇用 首相答弁の実行迫る
衆院予算委 佐々木議員の質問から
二十三日の衆院予算委員会で、日本共産党の佐々木憲昭衆院議員は、財界の要求にしたがって行われた労働法制の規制緩和をただし、キヤノンなどで続発する偽装請負を是正するよう求め、非正規社員を正社員化する具体策を要求しました。
非正規雇用増の背景 労働法制の規制緩和
政府は「景気が回復した」というのに、国民に実感がないのはなぜか。佐々木氏が示したのは、大企業が空前の利益をあげる一方、労働者の所得が百万円近くも落ち込んでいる現実です(グラフ)。大企業の経常利益は、バブル期よりも十兆円も増加しています。
佐々木氏は、労働者の減収は、正社員の半分から七割程度といわれている非正規社員の増加によるものだと批判し、安倍晋三首相の認識をただしました。
安倍首相は非正規雇用の増大は「働く側と企業のさまざまなニーズの結果」などと述べ、正面からの答弁を避けました。
しかし、内閣府の「ミニ経済白書」も「企業内で非正規雇用者比率が高まることは平均賃金水準を押し下げることになる」と認めています。
「利益をあげるために、人間をモノ扱いする企業の側に責任があるのは当然。同時にそれを後押しした政府にも大きな責任がある」と佐々木氏。一九八五年の労働者派遣法の制定から、労働法制を次々緩和して非正規雇用が増大してきた流れを示し、柳沢伯夫厚生労働相に「非正規雇用を増大させてきたことへの反省があるのか」とただしました。
柳沢厚労相は、労働法制によって非正規労働者が「なだらかに増加」したとのべ、増加は認めましたが、非正規労働者が増加したことへの反省の態度は示しませんでした。
佐々木氏は、「『なだらかだ』といいわけしても、政府の政策で増えてきたことは明らか。政府に責任がある」と厳しく指摘しました。
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正規雇用の道閉ざし財界の要望を実行
佐々木氏は、「経済財政白書」(〇六年版)でも若年層の「ほとんどが正規雇用に変わりたいと希望している」としていることを示し、若者の正規雇用への道が閉ざされていることへの対策を求めました。
昨年十月の市田忠義書記局長の質問にたいし、安倍首相は、「ワーキングプアといわれている若い方々が、非正規雇用から正規雇用に移っていく可能性をもっと拡大をしていく環境をつくらなければならない」と答弁しています。
佐々木氏は、首相にこの答弁どおり、請負や派遣労働者が正規雇用に移れるように、企業や財界にどのような指導をしたのかただしました。
安倍首相は、「正社員を増やせというようなことを民間企業に指示・命令することはできない」とのべ、政府としてまともな指導をしていないことが明らかになりました。
日本経団連の会長の御手洗冨士夫氏が会長をつとめるキヤノンでは、「請負や派遣労働者を正社員化する方針」と報道されたにもかかわらず、実際には、「請負から派遣、そして請負、そしてまた派遣契約にと、ころころと契約形態を変えられ」、正社員の中途採用試験をキヤノンの派遣、請負社員は受けられないと求人広告に明記されていました。(二十二日の公聴会での証言)
「いっていることとやっていることが全然違う」と迫った佐々木氏。安倍首相は、「個々の企業についていうのは差し控える」などとのべ、御手洗氏が「働き方の改善については理解していると思う」などとかばいました。
佐々木氏は、「そんなこともできないで、何が『再チャレンジ』か」と批判。総理がかばうことで、御手洗氏が経済財政諮問会議で、偽装請負の合法化や、正社員化の申し入れ義務がある派遣法の改悪、ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の除外制度)の早期成立など、いいたい放題になっていると指摘し、これでは経済財政諮問会議が「財界の指令塔」とよばれても仕方がないと批判しました。
いいなりになれば献金が増える仕組み
佐々木議員は、違法な偽装請負を続ける日本経団連の会長企業、キヤノンをかばい続ける安倍首相に対し、「この裏には、政治献金をてことした財界による政党の政策買収がある」と指摘しました。
日本経団連は政党にAからEまでの五段階で「通信簿」をつけ、その「通信簿」でいい点をとった政党に、企業献金を集中するよう呼びかけています。佐々木議員は、「いわば、経団連の言いなりになる政党に献金せよということで、まさに『通信簿方式』による『政策買収』というべきものだ」と批判。自民党の「通信簿」のA評価が、二〇〇四年三個、〇五年四個と評価が上がるほど献金が増えているグラフを示しました。
佐々木 言いなりになればなるほど献金が増える。こういう仕組み、癒着を断ち切る意思はないか。
首相 政策を評価しているのは経団連が独自にしていること。国民のためになる政策を考えて、その結果として経団連が評価し、献金をしている。
「通信簿方式」による「政策買収」を合理化する安倍首相にたいし、佐々木氏は「だいたい御手洗会長に一言も言えない状態で献金をもらい、そして政策そのものも経団連言いなりのものを実行する。日本の働く人々のためにも、経済、政治のためにも、このような経団連の政治支配を一刻も早く脱却すべきだ」と迫りました。
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