2007年2月28日(水)「しんぶん赤旗」

偽装請負

直接雇用を指導

厚労省 派遣へ転換認めず


 大企業の製造現場などで派遣労働者を請負労働のように装って働かせる違法な「偽装請負」について厚生労働省は三月一日から、是正方法として派遣への切り替えを認めず、受け入れ企業が労働者を直接雇用するなど指導を転換することが分かりました。日本共産党の小池晃参院議員に二十七日、需給調整事業課が明らかにしました。偽装請負を告発し、直接雇用を求めてきた労働者のたたかいと日本共産党の国会論戦による成果です。

 製造業への派遣は、二〇〇四年三月解禁。受け入れ企業は一年(三月から三年)を超えると労働者に直接雇用を申し込む義務が生じるため、請負契約を装う偽装請負が横行。しかし、これまで厚労省は、偽装請負と認めても直接雇用ではなく、派遣への切り替えや「適正な請負」など企業に都合のいい指導しかしてきませんでした。

 厚労省によると、派遣への切り替えは制度定着のため容認してきましたが、三月からは派遣期間が三年となり本格的制度になるため認めません。すでに派遣に切り替えたものは指導の対象にはしないといいます。この方針は、偽装請負が大きな社会問題となった昨年八月に決めたもので、企業にはセミナーなどで説明してきたとしています。

 需給事業課は「直接雇用に限って指導するわけではないが、派遣への切り替えは認めない」と言明。安定雇用を確保するため派遣制限を設けた派遣法の考え方にもとづく方針だとのべました。

 小池氏は「派遣への切り替えを認めないことは一歩前進だ。今後、直接雇用の指導を徹底すべきだ」と強調。「企業だけでなく、労働者・国民にも方針を文書で明らかにするなど知らせるべきだ」と求めました。


解説

偽装請負 直接雇用へ指導

労働者のたたかいと共産党の論戦の成果

 「偽装請負」を是正するさい、派遣への切り替えを認めず、労働者を直接雇用することなど厚生労働省が指導を転換することになったのは、労働者と日本共産党のたたかいによる成果です。

 キヤノンなど大手メーカーでは、派遣に切り替えて直接雇用を逃れてきましたが、今後はこういうやり方は認められません。各社は根本的見直しを迫られることになり、労働者が願う安定した雇用を実現するたたかいの力となるものです。

 厚労省はこれまで直接雇用に背を向けてきました。徳島県のトヨタ系列光洋シーリングテクノでも直接雇用を指導しませんでした。しかし、労働者のたたかいと日本共産党の国会論戦で企業を動かして昨年八月、直接雇用を勝ち取りました。

 これに押されて厚労省は昨年九月、偽装請負の是正通達を出すなど対策に乗り出さざるをえなくなり、三月からはとうとう直接雇用を指導することになったものです。

 ただし、直接雇用といっても、労働者が願う安定した長期雇用になる保障はありません。

 「期間工」として直接雇用にした、いすゞ自動車では、わずか二カ月の細切れ契約を繰り返し、「いつ雇い止めになるか不安で仕方がない。正社員など安定した雇用にしてほしい」という声が労働者から出ています。

 派遣労働は臨時的・一時的なもので、安定雇用を確保するというのが派遣法の考え方です。

 「直接雇用の申し込み義務」はそのための仕組みで、柳沢伯夫厚労相も経済財政諮問会議で「必ず長期雇用を申し込まなければならない義務がある」と言明しています。

 財界は、御手洗冨士夫経団連会長を先頭にこの申し込み義務の撤廃を求めています。不安定雇用を野放しにし、貧困と格差をいっそう拡大する横暴は認められません。

 大企業に安定した長期雇用を保障する社会的責任を果たさせることが求められています。(深山直人)


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