2007年2月28日(水)「しんぶん赤旗」
国会の焦点について
CS放送「各党はいま」 志位委員長が語る
日本共産党の志位和夫委員長は、二十七日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、これまでの国会論戦などについて、朝日新聞の星浩編集委員の質問に答えました。志位氏の発言(要旨)は次の通りです。
古い危険な自民党の姿がむき出し
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――安倍内閣の支持率が下がっているが。
志位 いくつか要因があるでしょう。柳沢伯夫厚生労働相の発言をはじめとする一連の閣僚の資格にかかわる問題。「貧困と格差」の広がりを認めず、暮らしの問題(解決)への答えがない。それなのに、憲法を変えるというきな臭い話だけは突出して出てくる危険なタカ派ぶり。これらが相乗的に作用していると思います。古い危険な自民党の姿がむき出しにあらわれていることへの批判だと思います。
人間の尊厳と人権を否定する思想が問われている
――国会論戦がスタートして一カ月です。柳沢発言をめぐる論戦は。
志位 柳沢発言は、どこが問題かを明らかにすることが大事です。女性を「産む機械」といった発言自体は女性の尊厳を否定する暴言です。それにつづく「一人頭でがんばってもらうしかない」という発言には、女性を国家の人口政策の道具としてしかみない深刻な思想の問題があります。
国連(「国際人口・開発会議」)が一九九四年に採択した文書では「すべてのカップルと個人が、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを自由に決定する基本的権利を持つ」としています。少子化の克服も、この権利が前提です。柳沢発言は、それを否定するものです。
柳沢氏は、工場労働者についても「労働時間だけが売り」と発言しました。人間をモノ扱いし、人権や自己決定権、人格を認めない考え方です。
柳沢氏も安倍首相も「言葉遣いが不適切だった」という表層の問題ですませようとしています。しかし、問われているのは人間の尊厳と人権を否定する自民党政治の思想そのものなのです。
「格差」論戦――三つの流れはっきり
――「格差」論戦についてはどうか。
志位 この間の論戦を通じて、三つの流れがはっきりあらわれてきたと思います。
まず、日本共産党の立場です。私たちは、OECD(経済協力開発機構)諸国の中でも、日本は米国とともに、「貧困と格差」の広がりがもっとも深刻な国だという現状を、具体的事実をしめして明らかにするとともに、その根源として(1)税と社会保障が所得再分配機能をきちんと果たしていない(2)人間らしく働く労働のルールが壊されてきた―という二点を指摘し、追及してきました。
ところが、政府の立場は、OECDのような国際機関の指摘にもかかわらず、「格差と貧困」自体を認めない立場です。だから、対処方針として「再チャレンジ」支援といっても非常にむなしい。また、安倍内閣がいう「上げ潮路線」は、大企業を伸ばしていけば、家計におこぼれがまわってくるという、すでに破たんした旧来型の「トリクルダウン」の理論にすぎません。実際は、大企業は家計から吸い上げてもうけているのですから。この重大な社会問題への認識も方策もない――これが政府の立場です。
もう一つの流れは、民主党です。民主党は「格差是正国会」と銘打っていますが、率直にいってこれまでとってきた立場をどう説明するのかを問わざるをえません。
民主党は、非正規雇用の増加を問題にしますが、派遣労働の一般職への拡大や、裁量労働制、有期雇用の拡大に賛成してきました。母子家庭への児童扶養手当の半減にも賛成しています。「格差」を自民党と一緒になって広げてきた責任はどこにいったのか。
彼らの論戦をみると、派遣労働を拡大した大本の責任や、児童扶養手当を削減した責任はいえない。肝心の根源は突けない。この三つの流れがはっきり出てきたと思います。
――「事務所費」問題はどうか。
志位 私は代表質問で、与野党を問わず疑惑をかけられた政治家は、自ら帳簿と領収書を明らかにすべきだと提起しました。しかし伊吹文明、松岡利勝両大臣などはいまだに公表していません。
民主党の小沢一郎代表は公表しましたが、政治家個人の「事務所費」として十億円が果たして必要なのか、投機的な運用はなかったのか、さらに説明が必要です。
改憲手続き法案阻止の国民的運動を
――憲法問題についてはどうか。
志位 安倍首相はこの間、“憲法九条は二十一世紀の世界の大きな流れにあわなくなった”として、世界との関係で“時代遅れ”という議論を立て始めています。
いま世界をみると、イラク戦争に示されているように、どんな大国でも軍事力だけでは世界を動かせない、平和的・外交的な解決が圧倒的な流れになっています。その二十一世紀の世界の姿に照らしたら、憲法九条こそ一番の先駆です。こんな時代に軍事同盟を強化して、米国と一緒になって海外に戦争に打って出ようなどと熱中している国は日本ぐらいです。
改憲手続き法案を、事もあろうに五月三日の憲法記念日までに通そうという動きがあり、これは予断を許しません。与党単独の動きもあるし、民主党を抱き込んで通すという動きもあります。
この法案が、九条改定に地続きの法案であることは当事者たちも認めていることです。
また国民の二割台ぐらいの賛成でも憲法が変えられてしまうことをはじめ、改憲を実現しやすくする党略的で、非民主的・不公正なしくみがいくつももりこまれています。これを阻止する国民的な運動を急速に広げることが必要ですし、わが党もそのために力をつくす決意です。