2007年2月28日(水)「しんぶん赤旗」
温暖化対策 米の政治介入
NASA研究所長が批判
“情報が知らされていない”
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【ワシントン=鎌塚由美】米航空宇宙局(NASA)ゴッダード宇宙研究所のジェームズ・ハンセン所長は二十六日、ワシントン市内で記者会見し、二酸化炭素(CO2)削減による温暖化対策の緊急性を改めて強調しました。地球温暖化を一九八〇年代から警告してきたハンセン氏は、個人の資格で会見し、政府研究機関へのブッシュ政権の政治的介入を批判しました。
ハンセン氏は、地球温暖化問題では、研究者が解明してきたことと、国民が知るべきことの間に「大きな溝」があると指摘。その原因として、「民主主義の根本的な前提である、情報を国民に誠実に知らせることが行われていない」と述べました。
同氏は、政府系研究機関で、「科学者の言葉を国民に分かりやすく伝える広報部門のトップが(政権によって)政治任命されている」ことと、連邦議会に報告義務を負う研究者の証言が、ホワイトハウスによって編集され「フィルターにかけられる」問題を指摘。「私の政府機関での三十年にわたる研究生活で、いまほど(政治的介入が)深刻な時はない」と述べました。
ハンセン氏は、チェイニー副大統領が米テレビとのインタビュー(二十三日)で地球温暖化の原因が人間の活動によるものかどうか「議論がある」などと述べたことについて、「疑問の余地がない」事実をいまだに認めようとしない「大変がっかりするものだ」と語りました。
ハンセン氏は、温暖化対策は「悲観的な先行きの話ばかりではない。エネルギーの自立的確保、節約、安全保障の面に寄与し、なにより環境・生物の保全につながる」と述べました。
CO2の削減のために、議会が検討すべき課題として、▽CO2を獲得・隔離する技術の開発まで、石炭を燃やす火力発電所の新たな建設を一時停止する▽炭素税の導入▽カリフォルニア州で採用されているエネルギー効率基準の連邦レベルでの導入―などを政策化するよう提言しました。