2007年3月1日(木)「しんぶん赤旗」
国会の視点
相次ぐ偽装請負/財界の「政策買収」
御手洗経団連会長国会招致が不可欠
日本共産党、民主党など野党側は、二〇〇七年度予算案の審議に関して、御手洗冨士夫日本経団連会長を衆院予算委員会に参考人として招致するよう求めています。同氏の招致は、今国会の最大のテーマの一つである「貧困・格差」問題にメスを入れるためにも、「政治とカネ」を解明するためにも不可欠です。
貧困と格差
「貧困と格差」の広がりをもたらした根源の一つに、派遣労働の自由化など労働法制の相次ぐ規制緩和をはじめ、人間らしく働く労働のルールが破壊されてきた問題があります。政府の「経済財政白書」も「若年層」の「ほとんどが正規雇用に変わりたいと希望している」と指摘していますが、その願いを踏みにじっています。
そのさなかに、御手洗氏が会長を務めるキヤノンで、実態は派遣労働なのに請負契約を装う「偽装請負」が相次いで報じられています。明白な違法行為です。
二月二十二日の衆院予算委員会公聴会では、公述人がキヤノンの労働実態について痛烈に告発しました。「派遣契約から請負契約に変更されたばかりの契約を再度、派遣契約に戻すと通告された」「求人広告には、キヤノンで働いている派遣、請負社員は正社員の採用試験を受けられないと明記されていた」
御手洗氏は経済財政諮問会議の民間議員で、経済財政政策に大きな影響力を持っています。その出身企業で偽装請負問題が起こっているのに、諮問会議では、「今の(労働者)派遣法のように三年たったら正社員にしろと硬直的にすると、たちまち日本のコストは硬直的になってしまう」などと派遣・請負法制のさらなる改悪まで主張しているのです。
安倍晋三首相は御手洗氏について、「改革・成長のエンジンとして経済財政諮問会議で活発に議論していただきたい」と擁護しています。それならば、御手洗氏を国会招致して、政府の経済財政政策をただし、「貧困・格差」の根源に迫ることは、国民の声をいかすためにも欠かせません。
政治とカネ
日本共産党の佐々木憲昭議員は衆院予算委員会(二月二十三日)で、政府・与党と財界の関係について、「重大なのは、このウラで政治献金が行われていることだ」と指摘しました。日本経団連が自民、民主両党の政策を評価して“通信簿”をつけ、その“成績”を参考に加盟企業が献金している仕組みです。佐々木氏は「政策買収だ。財界のいいなりになれば献金が増える。これは癒着だ」と批判しました。
御手洗会長は、法人税率のいっそうの引き下げや、消費税率の二ケタへの増税など手前勝手な要求を政府に突きつけています。日本経団連の機関誌『経済トレンド』一月号では、安倍首相と対談し、「政治と経済が車の両輪となって、美しい国、希望の国が実現されるよう努力していきたい」と一体ぶりをアピールしました。
政府・与党の政策決定の背後に、財界献金があるのではないのか。財界はなんのために、“通信簿方式”の政策評価を行っているのか――。その解明のためにも、御手洗氏の招致は避けられません。
野党側の参考人招致要求を与党側は拒否していますが、清潔な政治を願う世論にも背を向けるものです。(小林俊哉)