2007年3月1日(木)「しんぶん赤旗」
米国は戦後200回以上も戦争しているの?
〈問い〉 詩人のアーサー・ビナードさんと山田洋次さんの対談(「しんぶん赤旗」1月5日付)で、米国が第2次大戦後、200回以上も宣戦布告なしの戦争をしていると言っていましたが驚きました。もう少しくわしく知りたいのですが。(大阪・一読者)
〈答え〉 米国在住の漫画家ジョエル・アンドレアス氏の著書『戦争中毒』(邦訳2002年刊、合同出版)は、「冷戦の間、アメリカは外国に対し、200回以上も軍事的介入をおこなった」と述べています。
その出典は、米国の平和活動家ジョセフ・ガーソン氏ら編著の『ザ・サン・ネバー・セッツ―世界を覆う米軍基地』(同1994年刊、新日本出版社)です。同書は「アメリカが第三世界で行った200以上の軍事干渉」と書いています。
その具体例については、例えば元米国務省勤務のジャーナリスト、ウィリアム・ブルム氏の『アメリカの国家犯罪全書』(同03年刊、作品社)が、45年から99年の67の戦争・干渉を紹介しています。
英文資料では、米ワシントン州立エバーグリーン大学のゾルタン・グロスマン氏が、46年から今年1月のソマリア攻撃までの73件の一覧表「ウーンデッド・ニーからイラクまで―米国の軍事介入の一世紀」を発表しています。
これらの軍事介入は大小さまざまですが、国際法上の根拠を示す必要に迫られた場合に米国はしばしば、国連憲章第51条の自衛権規定を引きます。この条項は、国連安全保障理事会が「必要な措置をとるまでの間」、国連加盟国が「個別的又は集団的自衛」の権利を行使できるとしたものです。米国は、それを極端に拡大解釈し、国外での武力行使を正当化しようとします。
一方、米国憲法は第1条で、連邦議会の権限の一つとして「戦争を宣言する権限」を定めています。議会が宣戦布告をしたのは1941年の第2次世界大戦まで5回だけです。
憲法は同時に第2条で、大統領が軍「最高司令官」として戦争遂行の権限があると定め、それが拡大解釈されてきました。
このことがベトナム侵略戦争の泥沼化をもたらしたとの反省から、大統領の権限に一定の規制を加えようとする「戦争権限法」が73年につくられました。
ブッシュ大統領はいま、イラク情勢の「内戦化」に対して2万人以上の米軍増派を強行し、与党・共和党議員からも反対や懸念の声が広がっています。ブッシュ氏は「決定者は私だ」と反論し、戦争権限問題が改めて議論になっています。(明)
〔2007・3・1(木)〕