2007年3月4日(日)「しんぶん赤旗」
主張
ブッシュ核政策
これ以上危険を放置できない
ブッシュ政権は、二〇〇八年度(〇七年十月から〇八年九月)の予算案に事実上の新型核弾頭開発のための経費をもりこみました。保有する核兵器すべてを対象に、新型弾頭に置き換えていくことによって「核抑止力」を強めるのがねらいです。
核兵器は米先制攻撃戦略の柱です。イラク侵略のような介入戦争を国家方針にしているブッシュ政権が核兵器を持ち続けるのは、世界の平和にきわめて危険なことです。
元米高官が廃絶要求
ブッシュ政権の「信頼できる代替用核弾頭」(RRW)計画は重大です。「老朽化」した核弾頭を「信頼性の高い」新型核弾頭に置き換えるというものです。長期使用が可能な核兵器を保持し続けるとともに、必要な場合には、RRW開発・製造施設を使って短期間に保有核兵器を増強できるようになります。新たな核兵器強化政策にほかなりません。
地中の深いところで核兵器を爆発させる地中貫通型核兵器の開発の野望も捨てていません。住民の猛反対で実験ができなくなっても、実験以外の方法で開発することをブッシュ政権はねらっています。
〇五年末発動した、米軍が地球上のどこにでも迅速に攻撃できる「グローバル・ストライク(全地球的攻撃)」態勢も核兵器が中核です。
「安全で、信頼性が高く、失敗のない核戦力はひきつづき死活的な役割を果たす」(昨年三月の「米国家安全保障戦略」)というブッシュ政権の核兵器強化政策は、かつてない危険な局面を迎えています。
重大なのはブッシュ政権が核兵器を保有しない国に攻撃の矛先を向けていることです。
米統合参謀本部が〇五年に作成した「統合核兵器作戦指針」最終草案は、「圧倒的に強力な敵の通常戦力に対抗する場合」「米国に有利な条件で迅速に戦争を終結させようとする場合」など、八項目の核兵器の先制使用事例を明記しています。核兵器を先制使用する態勢をとることで、非核兵器保有国を思い通りにできると本気で考えているのです。
非核兵器保有国を核兵器で脅すというブッシュ政権の核政策は「核抑止力」論の危険な本質を浮き立たせるものとなっています。
こうした核政策に米国内で批判が強まってきているのは重要です。
キッシンジャー元国務長官、ペリー元国防長官ら四氏は、「核兵器のない世界」という表題で核兵器廃絶を呼びかける論文を発表しました(一月四日)。「核兵器に依存することはますます危険」と指摘し、「核兵器のない世界という目標」のために核兵器保有国にたいして「集中的な協力」を求めています。緊急措置として、「核兵器使用の危険を減らす」「前進配備用の短距離核兵器の廃絶」なども提唱しています。
「核抑止力」論にもとづき核戦略を進めてきた米政府の元高官がこうした見解を発表するというのは、それだけ核兵器の危険が放置できない段階にあることを示しています。
被爆国日本の役割
日本は世界で唯一の被爆国です。核兵器廃絶の実現は国民的悲願です。ブッシュ政権の核兵器強化政策を支持し、後押しできないはずです。アメリカの核兵器を「日本の防衛」「地域の平和と安全」に「寄与する」(二〇〇五年十月の米軍再編中間報告)といってアメリカを支持する日本政府の態度は言語道断です。
ブッシュ政権の核政策を許さず、核兵器廃絶運動を強めることが緊急焦眉(しょうび)の課題です。