2007年3月4日(日)「しんぶん赤旗」
「戦時の歴史を修正」
安倍首相「慰安婦」発言
米で波紋広がる
【ワシントン=鎌塚由美】安倍首相が旧日本軍の「慰安婦」問題で、「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べたことについて、米各紙は二日、地方紙を含め「日本の首相が慰安婦を否定」などの見出しでいっせいに報じました。安倍首相を「歴史を修正する国粋主義者」だと断じた報道もみられます。
ニューヨーク・タイムズ紙は「安倍首相、戦時の性にかんする日本の記録を退ける」との見出しで、東京特派員電を掲載。安倍首相の今回の発言は「日本政府のこれまでの立場を否定する」もので、「政府が一九九三年の談話の破棄を用意している最も明確なもの」だと述べました。
さらに、米議会下院の動きも紹介し、日本政府に改めて謝罪を求める決議の議論が始まっていると伝えています。
ロサンゼルス・タイムズ紙も、東京特派員の記事を掲載。「国粋主義者の政治家たち」が旧日本軍の関与を認めた河野談話の撤回を政府に求め、安倍首相も彼らに「同意した」と伝えました。
同記事は、「従軍慰安婦」問題をめぐって、大部分の歴史家と日本政府自身の調査が、日本軍による関与と強制があったと結論付けていることを指摘。一方、国粋主義者の政治家や学者が「従軍慰安婦」を「職業的売春婦」と主張し続けていると述べました。
安倍首相について、ニューヨーク・タイムズ紙はその歴史観にふれ、「戦時の歴史を修正する活動を率いてきた国粋主義者」だと指摘。ロサンゼルス・タイムズ紙も「与党・自民党の保守派で、国粋主義的な政治を積極的に主張する若い政治家グループの出身」だとし、「東京裁判での(第二次大戦の)戦犯の有罪判決の有効性や『慰安婦』の奴隷化における日本軍の役割にかんする歴史の総意に疑問を呈してきた」過去も紹介しています。
「従軍慰安婦」問題で、米議会に日本政府に誠実な謝罪を求める決議案を提出したマイク・ホンダ議員の地元カリフォルニア州のサンノゼ・マーキュリー・ニューズ紙は、「日本が『慰安婦』を否定」と題して、ホンダ議員の言葉を引用。「日本の高官は公式な謝罪を決して行わず、この問題で長年あいまいな言葉をつかってきた」と伝えました。
ペンシルベニア州のフィラデルフィア・インクアイアラー紙は、東京発の通信社電で、「中国でレイプした女性たちの絶えることのない悲鳴をいまだに忘れない」という「慰安婦」問題で証言を続ける元日本軍兵士の金子安次氏(87)の一文で始まる記事を掲載。自責の念を込めた同氏の言葉を引用し、安倍首相の「慰安婦」否定発言と対比させています。同記事は、テキサス州のフォート・ワース・スター・テレグラム紙にも掲載されました。