2007年3月5日(月)「しんぶん赤旗」

介護予防事業

対象者、来月から条件緩和

自治体の不十分な体制など課題も


厳しい基準に批判

 厚生労働省が、「介護予防事業」の見直しを打ち出しました。同事業は、運動機能トレーニングや食事指導などによって、高齢者が介護保険のサービスを使わなくてもすむようにすることを目的としたもの。当初の見込みよりも参加者が少ないため、四月から対象者の認定条件を緩和します。昨年四月の実施からわずか一年での方針変更です。

 介護予防事業の対象となるのは、近い将来介護が必要になりそうな高齢者で、市区町村が「特定高齢者」と認定した人です。健康診断などの際、高齢者に運動機能や認知症など二十五項目の質問(基本チェックリスト=別項)に回答してもらったうえで、血液検査や医師の問診の結果などを総合して判定します。

 現行の認定基準では、「運動機能の五項目すべてに該当」といった要件をクリアしなければなりません。自治体関係者からは、厳しい認定基準に批判が相次いでいました。

 厚労省の見直し案は、基本チェックリストの項目は変更せずに、該当する項目数がこれまでより少なくても対象者となるようにします。たとえば運動機能では、当てはまる必要がある項目数を現行の「五項目すべて」から「三項目以上」に、食事など口腔(こうくう)機能も「三項目すべて」から「二項目以上」に緩和します。

費用抑制狙い導入

 介護予防事業は、介護保険の給付費を抑制することをねらって、昨年四月から始まりました。厚労省は当初、六十五歳以上の5%程度が対象になると見込んでいました。しかし実際には、対象者は昨年十一月末時点でわずか0・44%。実際に参加した人はさらに少なく、0・14%にとどまりました。

 厚労省は、このままでは「想定した介護予防の効果が十分に見込めないおそれがある」として基準の緩和を決定。新しい条件で、対象者を六十五歳以上の8―12%、参加者を5%程度に引き上げることをめざします。

 厚労省は基準の見直しと合わせて、自治体に対し、基本チェックリストを実施する高齢者を六十五歳以上の四―六割に引き上げる(現行は23%)ことや、参加しやすい介護予防プログラムの実施など、参加者を増やす努力を求めています。

自治体職員の注文

 しかし実際には、事業を行う地域包括支援センターの体制が不十分で、対象となる高齢者をつかみきれないなどの問題が指摘されています。見直し案を議論した介護予防の検討会(二月二十七日)でも、自治体職員の委員から「対象者と判定された人が実際に事業に参加するよう説得するのに苦労している。基準を見直すだけでなく、その後の対応をどうするかが大きな課題だ」などの意見が出されました。

 介護給付費抑制という大本を変えず、現場に責任を押し付ける「見直し」では、矛盾の解決にはなりません。(秋野幸子)

表

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