2007年3月7日(水)「しんぶん赤旗」

最低賃金を引き上げれば、中小企業が困るのでは?


 〈問い〉 「最低賃金を引き上げれば、中小企業が困る」という声がありますが、どう考えますか?(大阪・一読者)

 〈答え〉 日本共産党は、最低賃金で働いても貧困にならない社会、人間らしい生活のできる最低賃金制の実現を求めています。貧困というのは、国際的には、国民の平均的所得の5割以下の所得しかないことですから、こうした社会を実現するには、最低賃金を平均的賃金の5割を目標に引き上げる必要があります。その水準は、時給にするとだいたい1000円です。ですから、労働団体がかかげる「時給1000円以上」の要求には合理的根拠があり、日本共産党は、これを支持しています。

 ご質問の件については、志位和夫委員長が国会で指摘したところです(衆院予算委員会、2月13日)。日本共産党の基本的考え方は、最低賃金の抜本的引き上げを、中小企業の経営をまもる対策と同時並行にすすめる必要がある、ということです。

 実は、最低賃金制と中小企業の関係は、最低賃金制の創設を審議した1958年の国会でも議論になりました(法制定は59年)。最低賃金制は中小企業の経営を圧迫するから、最低賃金制を施行する以前に、中小企業対策を先行させるべきだという問題が提起されたのに対して、岸信介首相は「むしろ並行してすすめるべきだ。この制度が施行されて、中小零細企業の劣悪な労働条件が改善され、能率もあがり、事業も安定し、過当の競争もなくなるということが、むしろ中小企業の対策としても効果があるし、それによって混乱を生じることはない」(参院本会議、58年2月21日)と答弁しています。安倍首相もこの立場に立つ必要があります。

 この点で、大企業による単価の買いたたきなど、下請けいじめを横行させている政治の責任が問われなければなりません。日本一の大もうけをあげているトヨタ自動車が、下請けに「韓国価格」「アジア価格」という超低単価をおしつけ、次々と倒産に追い込むような無法をやめさせる必要があります。

 中小企業を痛めつけている規制緩和万能論を抜本的に見直すことも必要です。規制緩和されたタクシー事業では、宮崎、大分、高知、島根の4県で、タクシー労働者の平均賃金が最低賃金を下回っています。明らかな違法状態が広がっています。

 不要不急の大型公共事業を見直し、地域密着型の公共事業に転換することによって、中小企業の仕事を増やし、営業をまもる政策に本腰を入れなければなりません。最低賃金を引き上げる中小企業への助成金や無利子の融資も必要でしょう。

 最低賃金を引き上げれば、労働者の収入が増えます。それが消費を増やし、地元企業の売り上げ増につながり、日本経済を草の根から温めていく力になっていくと考えます。

 なお、最低賃金を大幅に引き上げているEU諸国では、中小企業振興策が手厚く、中小企業の経営を圧迫するといった問題は、生じていません。(筒)

 〔2007・3・7(水)〕


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