2007年3月9日(金)「しんぶん赤旗」

主張

直接雇用の義務

法の厳格適用で雇用の安定を


 厚生労働省が、製造工場での労働者派遣法の厳格適用を指導する「通達」を三月一日付で都道府県労働局に出しました。

受け入れ企業の責任

 日本共産党の市田忠義書記局長が参院本会議の代表質問(一月三十一日)でとりあげたように、労働者派遣法にもとづけば、とうの昔に正社員になっていたはずの人たちが、派遣のままで、正社員と同じような仕事をしながら、正社員の半分以下の賃金で違法に働かされています。しかも、キヤノンや松下、トヨタなど日本を代表する大企業の工場では、派遣会社から労働者を大量に受け入れていながら、直接雇用の義務という使用者責任を逃れるために「請負」と偽る違法な「偽装請負」まで行われています。

 製造現場での違法労働の根絶は急務です。市田書記局長の質問に、安倍首相は、「派遣受け入れ期間の制限を超えて派遣労働者を受け入れることは違法であり、また、これを未然に防止する観点から、派遣先に派遣労働者に対する雇用契約の申し込みを義務づける仕組みを設けている。これらに違反する派遣先にたいしては厳格に指導していく」と答弁しました。直接雇用の義務を負う派遣先への厳格な指導を力説したのです。

 通達は、「派遣先及び派遣元事業主の双方に対し必要な指導を厳正に行い、速やかに是正を完了させる」としています。とくに、「派遣可能期間の制限にすでに抵触している労働者派遣に対しては、特に厳正に指導すること」と強調しています。

 製造現場の派遣受け入れ期間の制限は三月一日から三年になりますが、これまでは経過措置の一年でした。一年の受け入れ期限がすぎている労働者は「法律に抵触している」ので、派遣労働者として働かせることは認められないとしています。製造企業は、ただちに直接雇用の申し出義務を果たす必要があります。

 衆院予算委員会の公聴会(二月二十二日)で、キヤノンの工場で働く労働者が発言したように、大企業は偽装請負が批判されれば派遣に、派遣期限が来れば今度は請負にと、まるで奴隷のように働かせています。

 日本経団連は、法律で定められた直接雇用の申し出義務の廃止さえ、政府に要求しています。

 労働者派遣法は一九八五年の制定時には、限られた職種を対象に出発したものの、一九九九年には原則自由化され、二〇〇三年に製造現場にも持ち込まれました。同時に、派遣は一時的臨時的な労働に限定し、正社員を派遣で置き換えるようなことはあってはならないとされています。受け入れ企業に直接雇用の申し出を義務づけているのも、そのためです。

 国会での論戦と労働者のたたかいを受けた通達は、財界・大企業の横暴勝手を許さず、派遣労働者の権利を守るうえで大きな意義をもつものです。

二つの通達を活用して

 厚生労働省は、昨年九月四日には職業安定局需給調整事業課と労働基準局監督課の連名で「偽装請負に対する当面の取組について」という通達を出しています。製造業の大規模事業所での偽装請負の事実を指摘し、防止・解消をはかるための指導を強化する初めての通達でした。

 職業安定局需給調整事業課の今回の通達「改正労働者派遣法施行後の経過措置期間の終了に伴う留意点について」とあわせて活用し、製造大企業に、偽装請負と違法派遣の根絶と、直接雇用を求める力にしていくことが求められます。


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