2007年3月9日(金)「しんぶん赤旗」

論戦ハイライト

居眠り運転7割経験

バス会社過当競争の実態

参院予算委 小林議員


 規制緩和によって安全・安心をおろそかにするな―八日の参院予算委員会でスキーバス事故問題をとりあげた日本共産党の小林みえこ議員。過酷な労働と違法な低運賃を招いた規制緩和の害悪が浮かび上がりました。


 小林氏は、過酷な運転は事故をおこしたバス会社だけではないとして実態を紹介しました。

■39時間乗務

 大阪発の志賀高原スキーバスは、午後六時に家を出て翌々朝の午前九時に家に帰るまで三十九時間の乗務。その日の夕方にまた同じバスに乗る勤務を週三回こなします。

 東京ディズニーランドツアーでも、午後六時に家を出て翌々朝の午前十一時に帰宅する勤務に週二回も就いています。

 小林 体はくたくたになり、七割の運転手が居眠り運転を経験している。いつ事故がおこっても不思議ではない。

 冬柴鉄三国交相 過酷だなという印象だ。監査のときに労働時間を把握し、法令違反があれば命令を出して改善させる。

 柳沢伯夫厚労相 バス運転者の年間労働時間は全労働者より三百三十六時間長く、勤務状況はかなり厳しい。長時間労働など問題ある事業所を把握し監督指導していく。

■運賃の違反

 貸し切りバスは二〇〇〇年から参入や運賃が規制緩和されました。国交省は、規制緩和後バス会社が増える一方で会社の運賃収入が激減、事故が増えている実態を明らかにしました。

 小林氏は、規制緩和による運賃の値下げ競争が背景にあるとして、クリスタル観光の運賃を告発しました。同社は請負大手の元クリスタルグループ会社のバス会社です。

 大阪発で志賀高原に向かう旅行会社のスキーツアーの場合、法律で定める運賃(運輸局告示運賃の下限額)では約二十九万円なのに、同社が受け取った運賃額は十九万円にしかなりません。

 同社は、人件費抑制のため運転一回につき一万一千円の契約運転手も導入しています。正規社員でも基本給十五万円だけであとは歩合給。収入を増やすには長時間運転をしなければなりません。

 小林 運賃を低下させバス業界の競争を生む。それが人件費を抑制し、過労運転をもたらした。

 冬柴 告示運賃の下限を下回る届け出は拒絶する。示された事例について調査したい。

 実態を示され、告示違反の運賃を認めない姿勢を強調した冬柴氏に、小林氏は「規制緩和後の運賃や労働時間など実態を調査し、法令違反の是正はもちろん、過当競争を生み出す規制緩和そのものを検証すべきだ」とたたみかけました。

 冬柴氏は「死亡事故を教訓として誠心誠意やらねばならない」とのべ、全国いっせい実態調査の実施を約束しました。

■市場まかせ

 小林氏は、旅行会社の安価なバスツアー競争によるバス会社への低運賃の押し付けも問題だと指摘。前出のクリスタル観光の例を紹介しました。

 福井県越前町までのツアーでは、告示運賃では約十三万円なのに、旅行会社から受け取った運賃は半額近い七万五千円。過当競争のため、安値でも受けざるを得ない実態が背景にあります。国交省は昨年六月、旅行業者が法令違反をバス会社に強いないよう求める異例の通達を出しました。

 小林 大手のクリスタル観光が低運賃契約をすれば中小・零細会社も低運賃が強いられることになる。業界の仕組み、体質が問題の根源にある。

 冬柴 強い人が地位を利用して無理強いすることは許されない。旅行業者に出した通知が順守されるよう周知徹底していきたい。

 小林氏は「バス会社、旅行会社、市場任せでは大変な事態を招きかねない。政府は、安全安心最優先であらゆる手だてを考えるべきだ。規制緩和を見直し、必要な規制強化を行うよう求めたい」と強調しました。


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