2007年3月9日(金)「しんぶん赤旗」

安倍首相「慰安婦」発言 怒り広がる

法的、道義的補償を 国際法学者が米紙に投稿


 【ワシントン=鎌塚由美】米ジョージ・ワシントン大学のディナ・シェルトン教授(国際法)は六日付のロサンゼルス・タイムズ紙に投稿し、安倍首相が旧日本軍の「慰安婦」の強制の根拠はなかったと発言したことを厳しく批判しました。同氏は、元「慰安婦」の訴えを棄却し続ける日本の司法に触れ、「日本には不正義を正す道義的、法的義務がある」と述べました。

 シェルトン氏は、「欧州諸国でホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の否定が罰せられるべき犯罪」であるのと対照的に、日本の戦争犯罪は「完全に訴追されたり認識されることなく、ほとんどの犠牲者が救済されていない」と指摘。安倍首相の「慰安婦」否定発言は、「この説明責任の欠如を利用したもの」で、「抗し難い歴史の記録を否定することにより、生き残った女性を再び被害者にした」と述べました。

 一九九三年の河野談話について同教授は、日本政府は「道義的な責任の一つを認めた」が「法的な責任は認めていない」と指摘しました。

 その上で、「いかなる違法行為も終戦時のサンフランシスコ平和条約で決着済み」とする日本政府の主張について、「同条約の諸条項は、補償問題の再交渉が可能かもしれないことを示唆している」との見解を提示。元「慰安婦」や、日本政府の主張が間違いであると証明しようとしている日本国内外の人権活動家は、「その本文に、より慎重に目を向けるべきだ」と述べました。

 同氏は、日本の歴史問題は、「ニュルンベルクのような、完全で論駁(ろんばく)できないアジアにおける戦争犯罪の記録の欠如から発生している」と指摘。「日本政府が多くの自己の記録を焼却した」ことは、「歴史の空白が安倍首相の『証拠はなかった』と発言する余地を与えている」とし、「日本政府は、『慰安婦』たちに謝罪以上のものを負っている。法的で道義的な補償は避けられない」と述べました。


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