2007年3月10日(土)「しんぶん赤旗」
君が代は歌わなくてはならないの?
〈問い〉 卒業式などのときに歌う国歌(君が代)は歌わないといけないものなのでしょうか? わざわざ練習までさせられるのですが…。教頭先生が中心に強制してきます。これはどうなのでしょうか?(北海道・一中学生)
〈答え〉 たとえ学校として卒業式で国歌を歌うと決めたとしても、一人ひとりが実際にどうするかは、歌う自由もあるし、歌わない自由もあるというのが、民主主義のルールです。このことは憲法19条「思想、良心の自由」によって保障されている国民の権利です。
これをもう少し詳しく言うと、つぎのようなことです。日本の国歌「君が代」は、戦前には、日本の軍事的侵略のシンボルとして使われてきたという歴史的な事実があり、また、歌詞の内容も「天皇の世の中が永続するように」というもので主権在民とは異なります。こうしたもとで、「『君が代』は歌いたくない」など「君が代」に批判的な立場をとる自由は、憲法19条に明記された「思想、良心の自由」として、かたく保障されなければなりません。
式で歌いたい人にとっては、歌わない人がいることで、嫌な気持ちになるかもしれませんが、その「嫌な気持ち」があるからといっても、他人の「思想、良心の自由」という基本的人権を奪うことは、認められません。以上は、昨年の東京地裁の判決(東京都教育委員会の「日の丸」「君が代」強制を違法と判決した)でも述べられていることです。
一方、2月27日の最高裁判決は、ピアノ伴奏拒否による処分は不当とする教員側の訴えをしりぞけました。しかし、この判決は、ピアノ伴奏をしても教員の思想・良心は傷つかないという前提にたって下されたもので、判決文に付された藤田宙靖裁判官の反対意見が指摘するように、「踏み絵」(ピアノ伴奏)をしても「キリスト信仰」(思想・良心)は傷つかないという、無理な前提と人権への無感覚にたったもので、この判決をもって、教育委員会が憲法違反の強制をおこなうことはできません。
昨年の教育基本法を審議した国会でも、日本共産党の井上哲士参院議員が「当時の野中官房長官は『式典等において起立する自由もあれば起立しない自由もあろうかと思うわけでございますし、斉唱する自由もあれば斉唱しない自由もあろうかと思うわけでございまして、この法制化はそれを画一的にしようというわけではございません』と答弁されておりますが、これも当然維持をされると、こういうことでよろしいですね」と質問したのに対して、塩崎恭久官房長官は「そのとおりだと思います」と答弁しています。いやがる生徒に無理やり「君が代」を歌わせることは、憲法に抵触する違法行為だということを政府が国会で答弁しているのです。
これらをふまえれば、「君が代」の強制はできないはずです。(加)
〔2007・3・10(土)〕