2007年3月13日(火)「しんぶん赤旗」
主張
日豪EPA
交渉入り、やめるべきだ
世界各地での干ばつや豪雨など気象異常の頻発もあり、世界の食料生産は非常に不安定な状態になっています。しかも、日本の食料自給率は40%台と世界最低水準のままいっこうに改善されません。この事態に国民の七割が不安を感じ、八割を超える人びとが少々割高でも安全・安心な国産の食料をと求めています。
安倍内閣が四月にも交渉に入ると決めているオーストラリアとの経済連携協定(EPA)が、日本の農業に壊滅的な打撃を与え、国民の期待をくつがえすことにならないかと懸念されています。
国内農業に壊滅的な打撃
経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)は、経済の国際化が進み、物や資本、人の移動が活発になるなかで、いま各国との間で問題になっているものですが、日豪EPAの交渉でオーストラリア政府は、農産物貿易の関税を撤廃するよう求めています。
農産物のコストは、農業の規模や地価、労賃など、農家の努力だけでは克服できない国際格差が生じます。不利な条件をもつ国が生産を維持するためにとられるのが関税など適切な国境措置です。オーストラリアは世界有数の農産物輸出国で、農家の平均規模は日本の千八百倍と世界最大であり、日本の農家が努力すれば太刀打ちできるようなレベルではありません。
関税を撤廃した場合に予想される日本農業への影響は、小麦、砂糖、乳製品、牛肉の四品目だけで七千九百億円、全国の農業生産額の約10%の減産になり(農水省試算)、農業関連産業の多い北海道の場合、道全体で一兆三千七百億円(道内総生産の4・2%)生産が減少し、農家二万一千戸、雇用労働者四万七千人の職が失われると北海道庁では試算しています。
オーストラリアとの連携協定を強力に推進しているのは、日本の財界です。日本経団連の提言や経済財政諮問会議の場などで早期の交渉入りを要求する一方で、農業が障害になっているとして、大多数の農家を農政から締め出す農政改革の加速を繰り返しもとめています。
オーストラリアとのEPA交渉は、アメリカなど世界の農産物輸出国の新たな攻勢につながることも懸念されています。農水省が二月末に公表した「国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響(試算)」によると、農業生産額で一兆八千二百億円、農産加工業で二兆一千億円が減収、三百七十五万人の就業機会が失われます。食料自給率は40%から12%に低下するという試算になっています。
農業の再生産と食の安全
日本共産党の志位和夫委員長は五日、札幌市内で記者会見し、日豪のEPAについて、日本共産党はFTA一般に反対という機械的立場ではないが、日豪の農産物貿易を自由化すれば日本の家族農業は根本から破壊されるとのべ、「日本と北海道の農業の存廃にかかわる交渉には入るべきでない」と、反対する態度を明確にしました。
国会ではすでに衆参の農林水産委員会でも、重要品目を除外しない交渉入りには反対を決議しています。
国内農業を維持・発展させることは、食料の安定供給はもとより、地域経済や国土・環境にとっても重要な役割を持っており、国民の生存基盤にかかわる大問題です。安心して再生産できる農政を確立し、食料の安全・安心を確保するためにも、オーストラリアとのEPA交渉入りはやめるべきです。