2007年3月16日(金)「しんぶん赤旗」
貧困が生む命の格差
孤独死 生活保護受給者に多発
全日本民医連が十五日発表した「孤独死実態調査」。病気と貧困がからみあう格差社会の一端が浮かび上がってきました。(内藤真己子)
孤独死した人の多くは地域の老朽化したアパートに暮らしていました。
川崎市内の幹線道路とマンションに囲まれた一角に建つ古い木造アパートは、まるで時代の変化から取り残されたかのよう。近所の商店にアパートの名前を出して尋ねても「そんなアパート聞いたことないね」。地域のコミュニティーから完全に切り離された存在でした。
■病院に姿見せず
亡くなったのは六十五歳の無職の男性。慢性C型肝炎にかかり、肝がんの疑いもありました。昨年七月に初診。十一月に予約を入れてありましたが、姿を見せませんでした。病院からは、受診を促す手紙が出されましたが連絡もないまま、今月十二日、亡くなっているところを警察に発見されました。
民医連調査によると、孤独死は、昨年一月から九月までの間に分かっているだけでも九十九例を数えました。前出の事例を報告した川崎市の協同ふじさきクリニック(桑島政臣所長)では、同時期に六件の孤独死があり、その後も今月十二日までに五件も相次ぎました。
十一人のすべてが男性で独り暮らし。うち八人が生活保護の受給者。残りの三人は国民健康保険でした。年齢は六十歳代が最多の八人。七十歳代が二人、八十歳代が一人でした。
病気をみると糖尿病と合併症の脳こうそく・心臓疾患の人が四人、気管支ぜんそくや慢性呼吸不全が四人。肝炎・肝がんが二人、一人は不明です。どの患者も年齢の割に慢性疾患がかなり進行した状態でした。
調査をまとめた同クリニックの石原敏子看護部長は、「体の具合が悪くどうしようもなくなって病院にきて、生活保護を申請し治療を受け始めた矢先というケースが多い。それまでは無保険で治療が遅れた可能性が高い」といいます。
■療養できぬ水準
生活保護では医療費は扶助の対象で無料になりますが、保護費で認められる生活水準が療養環境としてふさわしいのかという問題もあります。
孤独死した患者には、風呂のないアパートに暮らす人もいます。銭湯は一回四百三十円。保護費の中では、とても毎日通うことはできません。糖尿病の合併症である壊疽(えそ)を防ぐためには体を清潔に保つことが欠かせませんが、週一回しか風呂に入れない人もいます。
糖尿病の治療のためのインシュリン自己注射液の管理や、バランスのとれた食事のために冷蔵庫は必須です。しかし、福祉事務所と交渉しても支給が認められないこともありました。
石原さんはいいます。
「この地域で看護師として働いて三十年になりますが、いまの生活保護受給者の暮らしはかつてなく悲惨です。孤独死した方は医療の格差、健康の格差、命の格差の犠牲者です。生活保護費の水準を療養できるように引き上げることと、日常生活の支援のためのサポート体制が整えられないと続発を防ぐことはできないと思います」
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