2007年3月17日(土)「しんぶん赤旗」
?けいざい?
郵政民営化で便利に?
サービス低下が加速
“郵政民営化で郵便局はますます便利になる”といっていたのは小泉純一郎前首相でした。ほんとうにそうでしょうか。(矢守一英)
十月からの郵政民営化実施を前に、“便利になる”との「約束」とは裏腹の事態が進みつつあります。
日本郵政公社が昨年秋から進めているのが集配郵便局の集配業務の廃止計画です。郵便物を集め、配達する業務や郵便貯金・簡易保険の外務営業を廃止し、その機能を別の郵便局に移すという内容です。
該当の郵便局では郵便業務は窓口だけになり、土日、祝日の時間外業務も原則的に廃止されます。配達地域が広がり、距離も延びることによる配達の遅れなどが懸念されています。過疎地で実施されている高齢者への在宅福祉サービス(ひまわりサービス=二〇〇六年三月末現在で百五十五市町村で実施)などきめ細やかなサービスの存続も保障はありません。
この計画の対象になっているのは全国で千四十八局。利用者や自治体からあがった反対の世論を押し切り、九百局以上(三月十二日現在)で強行されました。
計画が実行された郵便局ではどのようなことが起きているのでしょうか。昨年九月に集配業務が廃止された兵庫県の塩瀬郵便局の場合―。人口二万七千人余りを担当していた内務、外務合わせ二十五人の職員は、窓口職員二人に減らされました。
その結果はサービスの後退です。郵政産業労組の調査(〇六年十一月実施)では、59・3%が土曜、日曜・祝日の「時間外窓口廃止」で不便になったと答えています。「『貯金したければ自分で窓口までもってこい』といわんばかりで腹が立つ」など不満の声も寄せられました。
過疎地を中心に、郵便サービスを提供する簡易郵便局の閉鎖の拡大が問題になっています。郵政公社が発足した〇三年三月の時点で、七十一局だった一時閉鎖局は、三百二十三局(〇七年二月末現在)に急増しています。
さらに約二百の簡易郵便局長が委託契約を解除・保留の意向を示しており、一時閉鎖の数は最大で五百局程度にのぼる可能性も指摘されています。
簡易郵便局は、郵政公社が個人や地方自治体などと委託契約を結んで郵便業務を行う郵便局。全国に約四千四百あります。郵便局数の18%を占め、県別でも鳥取(約四割)など簡易局の比重が大きな県は少なくありません。
銀行など金融機関のない地域にとって生活に欠かせない郵便局ネットワークが断ち切られる危険に直面しています。
この背景には郵政民営化によって、小口中心の郵便貯金・簡易保険業務が銀行・保険一般にまで拡大し、複雑化することがあります。そのため生じることになる負担が、簡易局長に契約継続をちゅうちょさせる理由になっています。
利用件数が少ないという理由で、郵便局の現金自動預払機(ATM)の撤去が進行していることも重大です。
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郵便局外二千五百六十四カ所に設置されたATMの約三割が撤去対象になっています。病院や役所、大学のキャンパスなど公共性の高いところにあるものが多く、効率を優先して公共性を投げ捨てるやり方に利用者から批判の声が上がっています。
自民、公明が強行した郵政民営化に先駆けて、郵便局業務の地方切り捨てとサービス低下が加速しています。
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