2007年3月21日(水)「しんぶん赤旗」
「温暖化で農産物生産が減少する」という研究報告とは?
〈問い〉 13日の参議院予算委員会、紙智子議員の質問で、地球温暖化によって農産物の生産が大きく減少するとした研究報告をあげていましたが、どんな報告ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 地球温暖化と世界の食料生産に関する研究報告は、現在、二つの報告があります。
一つは、国際農林水産業研究センターの「地球温暖化が世界の食料需給に及ぼす影響の計量モデル分析」(2006年11月国際農林水産業研究成果情報第13号掲載)です。
これは50年間に気温が0・5度上昇する上昇率すなわち年間0・05%ずつ上昇した場合の01年から25年の期間の変化を分析したもので、シミュレーションの結論として「気温に変化がない場合に比べて、アメリカの粗粒穀物とコメ、インドの粗粒穀物とコメ、中国のトウモロコシの生産量が温暖化の影響を大きく受けて減少することが明らかになった」としています。
粗粒穀物とは、トウモロコシ、コウリャンなどの飼料用穀物をいいます。
もう一つの研究報告は、国立環境研究所の「気候変化がコムギ潜在生産性に及ぼす影響(2050年)」(出典「04年、適応を考慮した地球温暖化が穀物生産に及ぼす影響に関する研究」)です。
これは、地球の年平均気温が2・4度、米国の年平均気温の変化が約4・7度上昇したことを前提として、米国のコムギ潜在生産性が種変更・植え付け時期変更が全くなされない場合は、50年に75%減少し、変更した場合は、40%減少するというものです。この研究報告は、想定している気温上昇が数多くある気候変化予測の中でもかなり大きい方であること、二酸化炭素施肥効果を考慮していないなどの欠点があります。
他方、両研究報告は、ともに地球温暖化の進行によって激しさを増すとされている異常気象による影響は考慮されていません。ですから、事態は、より深刻に受け止めなければならないでしょう。
いずれにしても、日本が全輸入量の飼料用トウモロコシで94%、小麦で56%、大豆で75%も依存している米国の食料生産が地球温暖化によって、影響を受け、減少することは、避けがたいことです。仮に飼料用トウモロコシの輸入がストップしたなら、エサ不足で日本の畜産酪農は生産が不可能になり、食卓からは、牛乳、乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、卵は、姿を消すことになるでしょう。そうならないためにも、日本での飼料生産を含め食料自給率を抜本的に引き上げる取り組みが待ったなしの課題となっています。(小)
〔2007・3・21(水)〕