2007年3月25日(日)「しんぶん赤旗」
国保証
「困窮者から奪うな」行政動かす
住民・共産党が運動
国民健康保険の高すぎる保険料、非情な国民健康保険証取り上げ問題をどうするか―が、いっせい地方選挙の重大争点のひとつになっています。なかでも国保証の取り上げは“命綱”を奪い取ることに等しく、日本共産党は生活困窮者からの取り上げを中止するよう求めています。(内藤真己子)
地方選の重大争点に
国保料が高すぎて払えず、国保証を取り上げられる世帯が三十五万世帯を超え、医者にかかれず重症になる事態が続発、死亡した人は二〇〇五年以降の二年間だけで少なくとも二十五人に上っています。生活困窮者からの国保証の取り上げの中止は、待ったなしの課題です。すでに各地では、住民運動や共産党議員の奮闘によって、国保法で定められた国保証を取り上げない「特別の事情」の範囲を、自治体の裁量で広げる措置をとっているところも生まれています。
東京都の二十三特別区のなかには、「要綱」などで国が示す事例以外に「特別の事情」の対象となる範囲の拡大を明示している自治体があります。(表参照)
目黒区では、有効期間の短い「短期保険証」や、医療機関で治療費の全額払いが必要になる「資格証明書」を交付する措置から除外する世帯について、「取扱要領」で定めています。
対象世帯として、都・区独自の医療費助成を受けている人がいる世帯のほかに、「特に区長が短期証の交付の対象外と認めた世帯」を規定。この規定の運用で、六十五歳以上の高齢者か、小学生以下の子どもがいる世帯には、高額滞納世帯を除き、短期保険証や資格証明書を交付していません。
同区国保年金課は「社会的弱者や経済的配慮が必要な世帯に配慮したもの」と説明します。
地域の実情考慮し除外実施
東京都目黒区が「要領」を決めたのは〇二年一月です。以降、短期保険証と資格証明書の交付世帯の数は減少傾向にあります。
日本共産党区議団は、国保証の取り上げをおこなわないよう繰り返し議会で要求してきました。国が国保法を改悪し、自治体に国保証取り上げを義務付けた際には、区当局から資格証明書交付について「あくまでも目黒区の実態に合った内容で実施していく」との答弁を引き出しています。こうした追及などが実り、「要領」の制定につながりました。
また、静岡県三島市では党議員団が昨年の二月議会で、厚生労働省国民健康保険課課長補佐による、同課長通知の「解説」を示し、乳幼児医療費助成を受ける世帯から国保証を取り上げないよう要求しました。
同議員団が示した解説は、〇五年五月発行の『週刊 国保実務』に掲載されたもの。「地域雇用開発促進法による雇用機会増大促進地域や求職活動援助地域の指定を受けている地域ではリストラ等により離職した世帯を資格証明書の対象外とするとか、乳幼児の医療費助成の上乗せ支給している地域では対象となる乳幼児が含まれる世帯は資格証明書の対象外とすることを検討すべきである」としています。
党議員団は、「こうした考え方は最低限の基準として保持すべきだ」と要求し、市当局は「前向きに検討する」と答弁しました。これをきっかけに同市では昨年四月から、運用上、乳幼児医療費助成を受ける世帯からは国保証を取り上げないことを決めました。
このほか北海道旭川市では、住民団体の運動と日本共産党の要求が実を結び、「特別の事情」の十二項目にわたる対象範囲の拡大を「要綱取扱基準」で定めています。
対象としているのは、(1)世帯主の取引先が、事業の不振や失敗で休廃業し、売掛債権の回収が著しく困難なこと(2)下請け企業である世帯主が、親会社からの発注の減少等による影響を受けたこと(3)保険料を納付することにより、生計を維持することが著しく困難となること―などです。
■国保証を取り上げない「特別の事情」の対象拡大を「要綱」等で定めている東京の23特別区(主なもの)
新宿 (1)世帯主が破産法にもとづき破産宣告をうけた世帯(2)保険料の減額世帯(3)都または区の医療助成対象者のいる世帯(4)その他区長が認めた世帯
渋谷 (1)高齢受給者証の交付を受けた被保険者がいる世帯(2)ひとり親家庭医療費助成、乳幼児医療費助成を受ける者がいる世帯
杉並 (1)一部負担金の減免を受けている世帯(2)保険料の減額・減免を受けている世帯(3)都・区の医療助成制度の給付を受ける者がいる世帯(4)高齢受給者証の交付を受ける者がいる世帯
北 (1)東京都公費負担による医療制度を受給している者(老人医療、心身障害者医療、ひとり親家庭等医療、乳幼児医療など)(2)生計の主たる生計維持者が死亡・行方不明。生計を維持するためのサラ金等の債務、相続による借金、連帯保証人としての債務返済額が多大で保険料の納付が困難と認められる場合
葛飾 都や区が実施する医療助成事業の給付が受けられる被保険者のいる世帯
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