2007年3月27日(火)「しんぶん赤旗」

計画に正当性なし 東京地裁判決

東京海上日動火災の「外勤社員」切り捨て


 損害保険最大手の東京海上日動火災保険株式会社(東京千代田区・石原邦夫社長)で保険募集に従事する「外勤社員」を七月から廃止するリストラ計画について、東京地裁(難波孝一裁判長)は二十六日、正当性がないとして撤回を命じる判決を出しました。全日本損害保険労働組合日動火災外勤支部の佐藤修二委員長(59)ら四十六人が「制度廃止は、事実上の解雇に等しい」として中止を求めていたもの。保険金不払いに続いて雇用問題でも、損保トップの社会的責任が厳しく問われることになります。

 労働者側弁護団は、労働法制改悪がねらう「就業規則による労働条件の不利益変更」を認めず、大企業のリストラに事前差し止めを命じた点でも大きな意義があると記者会見で述べました。

 外勤社員は、地域限定で保険募集に携わる正社員のこと。佐藤さんらは東京海上と合併前の日動火災の時から外勤社員として働いてきました。

 ところが同社は、合併からわずか一年後の二〇〇五年十月、「不採算」を理由に九百二十一人が働く外勤社員制度を〇七年七月から廃止すると通告。会社をやめて保険代理店になるか、大半は既存代理店に出向する配転を選ぶかを迫りました。

 代理店になれば現在と同じ保険募集を維持しても、年収は平均31%(一人あたり約二百六十五万円)もダウン。代理店出向でも売り上げを二倍にしないと現在の賃金水準を維持できません。損保トップ企業が、さらにもうけるために外勤社員を切り捨てるねらいがありました。

 判決では、外勤社員が職種限定の契約であることを認め、正当な理由もなく契約内容を変更することはできないと指摘。制度廃止によって「大幅な減収が見込まれ、転居も伴う異動もあるなど生活上の不利益が大きく、正当性が認められない」として、七月以降も外勤社員としての地位にあることを認めました。

 「完全勝訴」と書かれた垂れ幕が東京地裁前に掲げられると、判決を待っていた家族や支援者から「やったぞ」「すごい」と歓声と拍手がわきおこりました。

 目を真っ赤にはらした佐藤原告団長は「たたかってきてよかった。これを力に廃止を撤回させたい」と訴えました。

 記者会見した全日本損害保険労働組合の吉田有秀委員長は「お客さんへの約束を守らない保険金不払いと、従業員に約束を守らず、首をきることは同じ根っこの問題だ。社会的信頼を回復し、損害保険の健全性を取り戻すうえでも大きな意義を持つ」とのべました。



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