2007年3月30日(金)「しんぶん赤旗」
靖国神社
戦犯合祀 国が関与
国会図書館新資料が裏付け
国立国会図書館は二十八日、靖国神社に関する非公開資料などを「新編靖国神社問題資料集」にまとめ、国会に提出しました。このなかで戦犯合祀(ごうし)は、旧陸海軍の流れをひく厚生省援護局と同神社が協議してすすめたこと、神社側が世論を気にして非公表を希望したことが明らかになりました。
また、侵略戦争を実施した罪で裁かれたA級戦犯について、合祀される九年前の一九六九年に、同神社が「合祀可」としていたこともわかりました。
非公開だった資料のうち、同神社作成の「合祀基準に関する打合会」によると、五八年四月九日、厚生省引揚援護局復員課職員と神社関係者が出席した第四回打ち合わせの際、同課の事務官が「B級以下で個別審議して差し支へない程度でしかも目立たないように合祀しては如何(いかが)」と提案しました。
旧厚生省援護局は、戦前の陸軍省・海軍省の流れをくむ第一・第二復員省を引き継いだ組織で、幹部には元軍人が多くいました。今回の文書にも厚生省側について「援護局復員課(旧陸軍)」「同業務第二課(旧海軍)」と明記しています。いわば旧軍関係者が戦犯合祀に関与したことを裏付けています。
五九年四月にBC級戦犯の一部が合祀された際の厚生省の文書には「靖国神社側は最も慎重な態度をとり、この際今次合祀者中に標記死没者が含まれていることを公表せず、世論と共に極めて自然に推移するよう希望しております」と書かれています。
A級戦犯については、同省は六六年に合祀を前提に同神社に名簿を送付。七○年ごろに神社の総代会でいったん合祀の方針を決めたことが従来わかっていました。
同神社の「合祀に関する検討資料」によると、六九年一月三十一日、神社側は同省との会合で、「法務死没者」として、A級戦犯十二人、内地未決死没者十人を「合祀可」とする見解を文書で示し、「外部発表は避ける。通知状は遺族直接に神社から届ける、県を経由することはしない」などとする注記がありました。A級戦犯合祀を極秘裏にすすめようとしたことがうかがえます。
結局、A級戦犯合祀は一九七八年にひそかに実施されました。「東京裁判史観を否定しないかぎり、日本の精神復興はできない」とする松平永芳宮司の就任直後でしたが、直接の経過を示す資料は含まれていません。このとき合祀されたA級戦犯は十四人。このうち東京裁判中に死亡した松岡洋右元外相と永野修身元海相の二人は今回の資料で内地未決死没者に含まれたとみられます。
新編靖国神社問題資料集 国会図書館は昨年一月から、国会議員らから資料要求が相次いだことを受け、靖国神社などからの収集に着手。資料集は約千二百ページに及び、戦前の合祀基準や中曽根内閣時代の「靖国神社参拝問題懇談会」の議事概要など八百八点の資料を収録しました。一般販売はせず、五月の連休をめどに閲覧を始め、同図書館のホームページにも公開します。
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