2007年4月2日(月)「しんぶん赤旗」
日本の侵略戦争
日米研究者がシンポ
「従軍慰安婦」問題など論議
ワシントン
【ワシントン=鎌塚由美】日本の過去の植民地支配・侵略戦争と今日のアジア諸国との関係について考えるシンポジウムが三月三十日、ワシントンで開催されました。米議会が設立したワシントンの米国平和研究所(USIP)が主催。日本の戦争責任や「従軍慰安婦」問題に取り組んできた日本の研究者や市民運動家らが招かれ、米国の研究者ら約五十人が参加しました。
弁護士の尾山宏氏は、家永教科書訴訟や中国人戦争被害者訴訟を紹介し、一連の裁判で「日本の加害の事実が詳細に認定されている」と指摘しました。
茨城大学、駿河台大学の名誉教授の荒井信一氏は、敗戦時に陸軍兵士だった自身の体験として、「すべての資料を焼くように」と命令されたことなど当時の軍による証拠隠滅を紹介。それによる「決定的資料」の欠如が歴史事実を否定する「憶測や無責任な言論」の「横行」を招いていると指摘しました。
都留文科大学教授の笠原十九司氏は、日中の学生を対象にした調査をもとに両国間の歴史認識のギャップを紹介。日本の政治状況に触れ、南京大虐殺事件などで教科書記載を政治家が妨害してきたことを指摘、彼らの一連の「教科書攻撃」にも言及しました。
司会のヘルシングUSIP教育副部長は、日本からの報告を「メディアでは分からない日本の動きだ」と評価しました。
「女たちの戦争と平和資料館」(WAM)館長の西野瑠美子氏は、二〇〇〇年に日本軍性奴隷制度を裁いた民衆法廷「女性国際戦犯法廷」の果たした役割に触れ、加害国の責任を明確にしていくWAMの取り組みを説明しました。
高知市の平和資料館「草の家」の事務局長を務めた金英丸さんは、戦時中に北海道で犠牲になった朝鮮人強制連行被害者の遺骨を、日韓市民グループが共同で調査したことを報告しました。
ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授はまとめとして、日本と東アジア諸国が歴史問題を解決していく過程での米国の“判事や仲介者”としての関与は「米国の手もきれいではなく、確信が持てない」と発言。「地域の社会レベルで議論できる制度的基盤をつくることの支援」を提案しました。
日本側参加者は、南京大虐殺事件から七十周年に当たる今年、アジア・欧州各地で戦争責任を問うシンポジウム開催を予定。今回をその一回目と位置づけています。
■関連キーワード