2007年4月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

能登震災1週間

柔軟できめの細かな対策を


 石川県の能登地方で震度6強の地震が発生し一人死亡三百人近くが負傷、二千戸を超す住宅が被害を受けた震災から一週間余りが過ぎました。現地ではいまなお余震が続き、輪島市や周辺の町では千人もの被災者が不便な避難所暮らしを続けています。道路や水道などライフラインの復旧は始まっていますが、住宅など生活と営業の再建はこれからです。

 被災地は農業が主な産業で、被災者の多くが高齢者です。被災地の現状に見合った柔軟できめの細かな対策が緊急に求められています。

被災者に寄り添って

 何より急がれるのは、避難所などでの被災者への手厚い支援です。突然の地震に何の備えもなく、なれない避難生活を始めなければならなかった圧倒的に高齢者が中心の被災者にとって、この一週間は決して短い期間ではありません。精神的・肉体的なストレスやこれからの生活への不安など、被災者のおかれた惨状は想像に余りあるものがあります。

 衣類や寝具、食事などに心を配ること、手厚い医療スタッフを配置することなど、やるべきことはたくさんあります。なかでも被災者に十分な情報を伝え、さまざまな相談にも親身になってこたえる活動は、被災者の不安解消に不可欠なものです。被災者からは情報不足を訴える声が聞こえます。被災者の立場に立った十分な情報提供が必要です。

 過疎化と高齢化が急速に進む被災地では、避難所だけでなく、被災した住宅に一人で暮らす高齢の被災者も少なくありません。避難所だけでなくこうした被災者にも支援の手が差し伸べられるべきです。

 今回の地震では、規模の大きさに比べ、なくなった人が少なかったのが特徴です。地域の助け合いが被災者の支えにもなっています。地震で助かった命がその後の避難生活の中で損なわれるなどという事態が絶対にないよう、行政が手厚い対策に乗り出し地域の力も生かして、対応することが求められます。

 とりわけ重要なのは、被災地の自治体任せにするのではなく、国と県が体制も強め、対応することです。被災地の自治体では職員自身が被災者でもあり、もともと職員数も限られるうえ不慣れもあって、今後の再建に不可欠な罹(り)災証明書の発行ひとつとってもスムーズに行かず、自治体で対応に差が出る事態も生まれています。統一的な対応のうえでも国と県の責任は重大です。

 高齢の被災者にとっては、災害救助法や被災者生活支援法などにもとづくさまざまな支援制度も、適用に複雑な手続きを必要とし、役所まで出向いて書類を提出しなければならないのでは、決して使い勝手のいいものではありません。制度を整えるとともにその運用でも、被災者を支援するという目的を貫き、被災者の立場に寄り添って、柔軟できめの細かな対策がとられるべきです。

生活再建には抜本策を

 高齢者が多く、農業以外これといった産業も少ない能登地方での生活と営業の再建には他の地域以上に抜本的な対策が不可欠です。このままでは被災者が被災地を離れなければならなくなる事態が相次ぎ、地域が衰退することにもなりかねません。

 高齢の被災者に自力での住宅再建は不可能です。仮設だけでなく恒久的な住宅を国と自治体が支援すべきです。農地や伝統産業の輪島塗などが再建できなければ地域での暮らしが成り立たなくなります。被災者が住み慣れた町に住み続けられるかどうかは文字通り政治の責任です。



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