2007年4月5日(木)「しんぶん赤旗」
警察の「誤認逮捕」 被害者への補償は?
〈問い〉 警察の誤認逮捕が問題になっています。そこでわからないのですが、警察は謝罪はするが、損害賠償はしないといっていることです。これはどう考えてもおかしいと思うのですが、法的には許されるのですか?(高知・一読者)
〈答え〉 警察の「誤認逮捕」がしばしば報道されます。警察が犯罪を犯したと疑った場合、逃亡や証拠隠しなどの防止のために逮捕の必要性があれば逮捕手続きをとれます。このときの犯罪の疑いは、有罪の証明のような確実なものでなく、その時の証拠関係から相当程度疑いがあるということでよいとされています。だからといって、警察が怠慢であやふやな証拠や、ずさんな捜査で、事実を確認せず「誤認逮捕」するなどは許せません。
ところで「誤認逮捕」されたときの補償は、どうなるかです。憲法40条は刑事補償について規定し、これによって「刑事補償法」が制定されています。しかし、その対象は「抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたとき」の場合で、起訴され無罪にならなければ補償を受けられません。これでは「誤認逮捕」などの被害者の人権は守れません。
そこで、「被疑者補償規程」(法務省訓令)で、「検察官は、被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき、公訴を提起しない処分があった場合において、その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときは、抑留又は拘禁による補償をする」とし、「刑事補償法」と同様に1日1000円以上1万2500円以下の範囲で補償金を支払うことにしていますが、十分活用されているとはいえません。
しかし、警察の「誤認逮捕」は当然に違法行為だとはされていないため、「誤認逮捕」の被害が十分に補償されていないのが実態です。公務員の違法行為に対する損害賠償を規定する「国家賠償法」の適用を求めた多くの裁判でも警察の「誤認逮捕」を捜査上やむを得ないとし、賠償を認めていません。
また、鹿児島の選挙違反事件でしめされているように「誤認逮捕」にかかわった警察官の処分もほとんど行われていません。「誤認逮捕」について、ずさんな捜査や自白の強要など問題がなかったか検証し、責任を明らかにすることが必要です。そうして「誤認逮捕」がなくなるようにすべきです。(小)
〔2007・4・5(木)〕