2007年4月8日(日)「しんぶん赤旗」
水不足 新たに数億人
3度超で農業生産減
温暖化で国連が報告書
【ブリュッセル=浅田信幸】国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」のパチャウリ議長は六日、ブリュッセルで開かれていた第二作業部会の報告発表の記者会見で、地球温暖化により「特に貧しい人々が被害を受ける」と述べ、対策強化を訴えました。
IPCCは一九八八年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が設立。今年発表される一連の報告書は、九〇年発表の第一次報告以来、四度目です。日本を含む百三十カ国の約二千五百人の科学者の研究に基づいています。
IPCC報告は、温暖化についての最も権威ある評価文書。九五年の第二次報告の評価の上に立って、温暖化防止の初の国際協定である京都議定書が九七年に採択されました。
温暖化が世界に及ぼす影響を予測した今回の報告は、温暖化が氷山の溶融、川の流れの変化、海面上昇、異常気象の多発、沿岸部の災害、一部生物種の消滅など、自然や生態系に大きな影響を及ぼすと指摘。
新たに数億人が水不足に直面するなど、人々の生活に深刻な事態をもたらすと予想しています。また気温上昇が三度を超えると世界の農業生産高は減少に転じると予測しています。
報告は地域別の影響を分析。アフリカが「気候変動に対して最も脆弱(ぜいじゃく)な大陸」とされ、二〇二〇年までに少なくとも七千五百万人、最大で二億五千万人が水不足に直面します。
アジアでは、中央・南・東・東南アジアの大河流域で、人口増と生活水準の向上から需要が増す真水の確保が難しくなり、その影響は五〇年代までに少なくとも十億人に及ぶとしています。穀物生産では今世紀半ばまでに中央・南アジアでは30%の減産となり、いくつかの途上国が飢餓に直面する危険は「非常に高く」なります。
オーストラリアでは降雨量の減少により水不足が深刻になり、二〇年までに「生物種の消滅が深刻になる」と予想しています。
一方、気候変動に対する脆弱性では、サンゴ礁の死滅が、海水温度の上昇だけでなく海水汚染や農薬など気候以外の要因にも左右されると指摘。持続可能な開発は、適応力を強め、回復力を増すことで、温暖化により効果的に対処しうると強調しています。
IPCCには三つの作業部会があります。六日発表の第二作業部会報告は、二月発表の温暖化の動向を予測した第一作業部会報告、五月発表の温暖化の影響の緩和策についての第三作業部会報告とあわせ、十一月に第四次統合報告(全体報告)として採択される予定です。
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