2007年4月13日(金)「しんぶん赤旗」
「従軍慰安婦」での米議会報告指摘
全段階で日本軍が関与
【ワシントン=山崎伸治】米議会調査局の報告書「日本軍の『慰安婦』制度」は、日本国内で一九九三年の河野談話を見直す動きがあることを批判的に指摘。「従軍慰安婦」に関してこれまで明らかになっている証拠を改めて紹介し、日本政府、日本軍が深く関与したことを明らかにしています。
報告書は「日本における河野談話改定の動き」として、昨年十月に下村博文官房副長官が「新たな研究」を求めたことや、自民党有志議員による「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の設立、「慰安所」の設置に軍の関与を否定した自民党の中川昭一政調会長や麻生太郎外相らの発言をあげています。
「慰安婦」制度に関する証拠として、一九九二年の吉見義明氏の研究や四四年にビルマで韓国人「慰安婦」の証言を聴取した米戦争情報局の報告、九二年の韓国外務省報告、九四年に公表されたオランダ政府の報告、日本政府が行い、河野談話の基となった九二、九三年の調査、四百人以上の「慰安婦」の証言にもとづく二〇〇二年出版の田中由紀氏の著書『日本の慰安婦』など九件を列挙。これらが「慰安婦」をめぐって日本の国内外で論争となってきた問題点について情報を提供しているとして、それぞれ資料を示しながら次のように整理しています。
創設と募集・輸送
第一は「慰安婦制度創設における日本軍および日本政府の関与の度合い」。報告書は「日本政府と軍が直接に制度をつくったことは明白」と指摘しています。
第二は「日本軍が慰安婦の募集と輸送、『慰安所』の管理に関与していたかどうか」。報告書は「日本軍は同制度の運営にあらゆる段階で関与していた」と結論づけています。
第三は「女性が慰安婦制度に組み込まれたのは自発的か、強制か」。報告書は「強制」とは「暴力的な行動で無理強いすること」だとして、田中氏の著書で二百人以上の元「慰安婦」が日本軍や憲兵、軍の代理人による暴力的な拘束について述べていると指摘しています。
強制疑う余地なし
しかし同時に、「慰安婦」の募集に強制があったかどうかの議論は、「慰安婦が制度に組み込まれたのは自発的か強制かという、より幅広い問題をあいまいにしている」と批判。「ほとんどの慰安婦が強制的に制度に組み込まれたことは、明らかになっている証拠から疑う余地はない。純粋に自発的だったというのはこの制度ではほとんどなかったようである」と強調しています。
報告書は募集について、「朝鮮半島では軍が直接実施しなかったかもしれない」「大半は民間業者によって、身体的な強制よりも、だましたり、家族に圧力をかけたりしていた」と述べています。しかし続けて、「もっとも、慰安婦の中には物理的に拉致されたと主張する人もいる」と指摘しています。
さらに、「募集段階の強制性の否定はオランダ戦犯法廷の事実認定と判決の無視」につながると強調。安倍首相らの議論は「募集だけを強調することで、他の要素に日本軍が深くかかわったことをできるだけ小さくしようとするものだ」と述べています。
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