2007年4月14日(土)「しんぶん赤旗」
シベリア抑留問題とは?
〈問い〉 シベリア抑留者問題はいまどうなっているのですか?(大分・一読者)
〈答え〉 シベリア抑留問題とは、第二次世界大戦の終結の時期に、中国東北部にいた約60万人以上の日本軍兵士や民間人がソ連の捕虜として連行され、シベリアでの強制労働に従事させられた問題です。強制連行は、1945年8月にスターリンが拘留指令を出したためであり、この結果、抑留者の帰国が終わる56年までの間に、6万人以上が厳寒の地で命を落としました。
この行為は、捕虜のすみやかな送還を明記したハーグ陸戦規則にも、武装を解除した日本軍兵士が「各自の家庭に復帰」することを定めたポツダム宣言にも反するものです。このように国際法を乱暴に踏みにじったソ連側に、シベリア抑留の悲劇を生んだ最大の責任があることは明白で、93年にエリツィン大統領が謝罪しています。
日本政府は、「ソ連」への請求権は56年の日ソ共同宣言で相互放棄されたとしていますが、抑留者は日本軍に徴兵・徴用されたものであり、強制労働に対する未払賃金は日本政府の責任で行われるべきです。
79年に、全国抑留者補償協会(全抑協)が設立され、抑留者への未払賃金を払えなどの運動が始まるなかで、政府は88年、「平和記念事業特別基金等に関する法律」を制定し、この「基金」で、抑留者に10万円の慰労金(国債)、銀杯を贈呈、これで決着済みとしました。しかし、死に直面し苦労を重ねてきたシベリア抑留者に対して、わずか10万円支給しただけで、戦後処理は終わったなどというような態度をとり続けることは到底認められません。
この「平和記念事業」法も昨年12月に廃止され、2010年9月末には基金が解散されることになっています。基金の解散を機に、現行の書状や銀杯などの贈呈事業は終了し、この4月から「慰労品」(強制抑留者には10万円程度の旅行券など)を贈呈することになります。「全抑協」は「平和記念事業」をやめる場合でも、対象者が高齢化しており、旅行券ではなく使い勝手の良い現金を支給すること、資料や文献、遺品などの保存・管理をしっかりすること、などを要求しています。
シベリア抑留者の賃金未払い問題は、超党派で解決の道が探られ、共産、民主、社民3党が05年7月に「戦後強制抑留者特別給付金支給法案」を提出し、特別給付金の支給などで解決を図ることを提案してきました。しかし、与党が消極的なため、法の制定にはいたっていません。
シベリア抑留者の未払い賃金問題の解決は、旅行券を配って幕引きとするのではなく、少なくとも野党3党が出した「特別給付金支給法」の実現を土台に、新たな立法措置で抜本的な解決が図られるべきです。(吉)
〔2007・4・14(土)〕