2007年4月16日(月)「しんぶん赤旗」
国連安保理
温暖化で初の公開協議
安全保障上の問題として
【ロンドン=岡崎衆史】国連安全保障理事会は十七日、地球温暖化が安全保障に与える影響について公開協議を行います。安保理で温暖化を正面から論議するのは初めて。提案国で四月の議長国・英国が、渋る米国などを説得して実現しました。安保理は温暖化を単に環境問題としてではなく、平和と安全保障の上の問題と位置づける見込みです。
ベケット英外相が会議の議長を務め、安保理構成国以外も含めて公開で協議します。各国からは閣僚級の出席者が予想されています。
英国は、安保理で二〇〇〇年に行われたエイズ問題の協議が基金設立につながったことから、十七日の協議が、温暖化への関心を高め、具体的取り組みで前進することを期待しています。
英国が配布した事前資料は、現在の紛争の直接の要因は国家や地域紛争だとした上で、「気候変動の累積的な影響はこれらの紛争をさらに悪化させる」と指摘。予想される安全保障上の影響として、(1)地形の変動による国境紛争(2)海面上昇や水不足から生じる居住地域の減少による人口移動(3)水や農地の不足、エネルギー供給源の転換が引き起こす資源獲得競争(4)社会格差拡大―などを挙げました。
人口移動に関しては、最大二億人が移動を強いられ、民族構成や人口に変化をもたらし、「不安定化や紛争を増大させる可能性がある」と警告。社会格差では、国家間と国内の両方で紛争を招く危険を指摘しました。
温暖化の影響が特に大きい地域としては、サハラ砂漠南部、アフリカ大陸北東部、中東の一部、アジア太平洋の一部を挙げています。
「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は六日、第二作業部会の報告書を発表し、二〇年代に数億人が水不足に陥る可能性などを警告していました。
温暖化をめぐる国際的取り組みの今の焦点は、京都議定書が定める温室効果ガス削減目標の期限が切れる一三年以降について、新たな対策の枠組みをつくることです。
六月にドイツで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)では、京都議定書で削減義務を負わない中国やインドなど、途上国の温室効果ガス大排出国も招いて温暖化問題を協議する予定。サミットに向け、英国などは、各国の利害が対立し難航する温暖化対策が、安保理協議を機に前進することを期待しています。
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