2007年4月19日(木)「しんぶん赤旗」
7人に減税200億円って本当?
〈問い〉 わずか7人の大金持ちに200億円の減税をしているというのは本当ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 7人の大金持ちへの200億円減税とは、株式等譲渡益に対する減税額のことです。
国税庁の平成17年分申告所得税標本調査によると、2005年に100億円超の所得を申告した7人の株式等譲渡益の合計額は約2000億円でした。上場株式等譲渡益の税率は、国税と地方税を合わせると本則20%のところ、現在、特例で10%に軽減されています。そのため、本来なら7人の大金持ちの納税額は約400億円となりますが、この特例により約200億円の納税で済みます。
この調査を見ると、7人の大金持ちだけでなく、この優遇税制が一部の資産家に多大な恩恵を与えていることがわかります。
例えば、株式等譲渡益の申告をした31万4163人のうち、1億円以上の申告所得があった人はたった1・6%の5024人です。一方、その1・6%の人の株式等譲渡益は、総額2兆6519億円のうち1兆5005億円で、56・6%にもなります。同様に推定すると5024人の減税額は約1500億円にもなります。
諸外国と比較すると、イギリスでは、働くことにより得る勤労所得と株式投資や預貯金等の運用益による金融所得などを合算して課税する総合課税が採用されているため、このような多額の株式の売却益を得た人も最高税率40%で課税されます。アメリカも総合課税です。フランスは申告分離課税ですが株式の売却益には一律27%の税率がかかります。
例えば、上場株式の売却益のみの収入で300億円の所得がある人の場合、日本では、国税・地方税をあわせ約30億円の納税となります。一方、諸外国の税額は、イギリス約120億円、アメリカ(ニューヨーク市)約71億円、フランス約81億円となります。これは、応能負担の原則により所得税に再配分機能を働かせるための近代国家では当然の措置であり、日本の大金持ち優遇ぶりが際立っています。
上場株式等の譲渡益にかかる税率は、02年までは本則26%でした。02〜03年当時、株式市場が低迷したため株価対策として、この上場株式等譲渡益や配当金の軽減税率など証券優遇措置が導入されました。しかし、この措置が大金持ちを優遇し資産格差やライブドア事件などで明らかになったように投機的な投資を誘発する要因となったことは間違いありません。
今国会、自民党公明党は、07年末までの特例であったこの優遇税制の一年延長を決めました。証券優遇税制の減税効果は約1兆円です。所得格差を拡大する金持ち優遇税制にはノーの声を上げましょう。
〈注〉ただし、この調査では減税の対象とならない未上場株式の譲渡所得も含まれるため、あくまでもこの減税額は推定値となります。しかし、実際には、未上場株式は市場で流通していないため、その割合は非常に少ないと考えられます。(芳)〔2007・4・19(木)〕