2007年4月22日(日)「しんぶん赤旗」
国会の視点
改憲 教育 イラク
暴走する悪法審議
「安倍カラー」押し出し狙う
九条改憲と地続きの改憲手続き法案の衆院強行に続いて、参院でも与党の横暴な運営がおこなわれ、九条改憲を前面に掲げた安倍政権と、自民、公明の与党による「軍事・強権国家」づくりに向けた暴走がさらに加速しています。
与党は、少年院送致の年齢下限を引き下げ、厳罰主義を強化する少年法改悪案まで十九日に衆院本会議で強行可決しました。二十日には、改悪教育基本法による教育統制を具体化する関連三法案が、衆院特別委員会で審議入りしました。
衆院で強行された在日米軍再編促進法案の参院審議も二十五日に始まります。さらに、イラクへの自衛隊派兵を二年延長する特措法改悪案の衆院審議を、安倍首相の訪米(二十六日)前の二十四日にも開始するとしており、「安倍カラー」押し出しを狙う悪法の審議が次々と進む異常事態です。
連日ごり押し
「憲法の付属法である法案の審議を、委員が出席できないようなやり方ですすめるのは異常だ。会議録を精査する間もなく連日の審議を迫られる、こんな審議であってはならない」
改憲手続き法案を審議する参院憲法調査特別委員会で十九日、質問に立った日本共産党の仁比聡平議員が、関谷勝嗣委員長に対し厳しく抗議しました。
十七日に始まった同特別委で、与党は、手続き法案を何が何でも成立させるため、連日審議をごり押ししています。
各常任委員会開催と重なった十九日午前の特別委審議には、三十五人の委員のうち、出席者は最多時でも二十六人。その日程や質問の割り振りも、前日夜の理事懇談会で決まる異例ぶり。委員長が審議入りに際し、「公正を旨として審議が十分尽くされるよう努力したい」と述べたことと正反対の展開です。
審議の中身でも、与党の法案提出者は、仁比氏の追及により、「憲法に明記されていない」という最低投票率を設けない根拠が破たんしたにもかかわらず、あくまで最低投票率規定を拒否。九条改憲を通りやすくする手続き法案の本質がいよいよ鮮明になっています。
自衛隊の派兵が続くイラクでは、米軍増派による首都制圧作戦が二月に開始されたにもかかわらず、十八日に爆弾テロで百八十人以上が死亡するなど、治安は悪化の一途をたどっています。
米軍支援の自衛隊派兵延長は、窮地に立たされているブッシュ米大統領への助太刀であり、そこには九条改憲の狙いが透けて見えます。
安倍首相は就任時、改憲とともに、「再チャレンジ」を売り物にしましたが、こちらは早くも風前のともしび。「政治とカネ」の問題でも、与党による政治資金規正法改正議論は尻すぼみです。ここにも、国民の最大関心事はほったらかし、ひたすら改憲に走る安倍政権の危険な姿があります。
この国民無視を可能にしている要因の一つが、自民党と対決できない民主党の役割です。
民主巻き込み
民主党の枝野幸男憲法調査会長は、改憲手続き法案が可決された十三日の衆院本会議で、「首相が衆参両院の三分の二以上の賛成で成立させることを断念するなら、憲法改正を真摯(しんし)に考えていない究極の護憲派だ」などとのべ、はからずも、自民党以上に改憲に熱心な立場を露呈しました。重要法案が衆院を次々通過する状況に、「民主党が国会ですっかり存在感を失っている」(「朝日」十九日付)と指摘されています。
民主党を巻き込みつつ進む「軍事・強権国家」づくり。しかし、この暴走は、平和と民主主義を願う国民との矛盾、アジアをはじめ国際社会との矛盾を広げざるを得ません。(小泉大介)