2007年4月25日(水)「しんぶん赤旗」

主張

イラク特措法延長

米軍撤退求める流れに反する


 二十四日からイラク特措法を二年延長する「改正」案の審議がはじまりました。安部首相が二十六日からの日米首脳会談のさいのブッシュ大統領への“手土産”にしようとしているのは見え見えです。

 ブッシュ政権が二月からはじめた新たな軍事作戦は、治安の改善どころかますます悪化させ、罪のない住民を死の危険にさらしています。イラクでもアメリカでも、国際社会で米軍・多国籍軍の撤退を求める声が大きくなっています。そのときにイラク特措法を延長し米軍支援を続けるなどとんでもないことです。

情勢は悪化の一途

 米軍・イラク軍は、バグダッド市内に三十カ所以上の陣地をつくり、細分した作戦区域をしらみつぶしに急襲しています。しかし、一掃するはずの武装勢力は他の地域に移動しており、モグラたたきのような状況です。被害を受けるのはもっぱら住民です。完全武装の兵隊が扉を押し開け、銃を突きつけて家宅捜索するなど、人権も無視しています。治安はますます悪化し、バグダッドの中心地さえ迫撃砲が打ち込まれ、議会のある建物で自爆テロ事件もおこっています。十八日には一度に住民百八十人以上が犠牲になりました。

 米軍は、新軍事作戦をはじめてから、イラク全体で暴力やテロが増大し、爆弾テロは三割も増加したことを認めています。イラク人の犠牲者も三月は作戦が本格化する前の二月より15%も増えました。

 米軍の軍事作戦は、一般住民を殺りくし、恨みを大きくしています。イギリスのBBC放送は、英米独のテレビ局が実施した世論調査で、イラク国民の78%が米軍・多国籍軍の駐留に反対していると伝えました(三月十九日)。二〇〇五年調査の65%を大幅に上回る数字です。

 しかも、過半数が、抵抗勢力の米英軍への攻撃を支持しているといいます。米軍を撤退させるためなら武力もやむをえないとみているのです。それが治安を悪化させる原因にもなり、テロ勢力につけいるすきを与えています。米軍が駐留し続ける限り、暴力もテロもなくならないのはあきらかです。

 イラク国民はアメリカに撤退の期限を示せという要求を強めています。今月はじめには、南部の諸都市で五十万人ともいわれる人々が米軍の駐留に抗議し撤退を求めました。

 イラク議会でも期限を示した撤退を求める動きが強まっています。シーア派のサドル師派は、マリキ首相が米軍撤退の期限を示さないことに反発して、政府から閣僚六人を引き揚げました。

 アメリカ議会では上院が来年三月末までに、下院が来年八月末までに米軍を撤退させることを盛り込んだ法律を成立させました。アラブ連盟は米軍の撤退日程を盛り込んだ国連安保理決議を目指しています。

 イラク国民も国際社会もブッシュ大統領に、期限をつけた撤退を強く求めています。日本政府は、国際社会と連携して、米軍撤退のため外交的努力をすべきです。

自衛隊は即時撤退を

 イラク戦争は誤った情報をもとにはじめた誤った侵略戦争であることはすでに明白です。六十五万人ともいわれる犠牲者をだし、国内、国外の四百万人をこえる避難民をだしている戦争を一刻も早くやめさせなければなりません。

 イラク国民も国際社会も米軍・多国籍軍の撤退を求めているときに、イラク特措法を二年延長して、米軍を支援し続けることは許されません。



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