2007年4月25日(水)「しんぶん赤旗」
イラク破壊 加担いつまで
派兵延長審議入り
“米軍と一体化”さらに
イラク派兵の航空自衛隊の活動を二年延長するための特措法改悪案が二十四日、衆院で審議入りしました。米軍の武力行使と一体化した活動の延長は、憲法違反をさらにごり押しするものであると同時に、「内戦状態」にあえぐイラク国民をさらに窮地に追い込むものです。(小泉大介)
「復興支援」根拠崩れる
日本共産党の赤嶺政賢議員が、二月二十一日の衆院イラク特別委で、航空自衛隊の輸送活動の75%が、米軍を中心とした多国籍軍支援であるとただしたのにたいし、防衛省側は「主として多国籍軍への支援」とこれを認めました。
安倍晋三首相や久間章生防衛相がさかんに、イラクの航空自衛隊の活動を「人道復興支援」だと強弁してきましたが、この口実は完全に成り立たなくなっています。
二〇〇四年三月に始まった空自の輸送活動は、当初はイラク南部に限定していましたが、昨年六月の陸自のサマワ撤退と同時に、首都バグダッドやさらに北方のエルビルまで拡大しました。
当時、米中央空軍のスノー司令官が、空輸支援によって、「確実に戦闘作戦が可能になる」と語ったように、空自の活動が、米軍の軍事作戦に組み込まれていることはまぎれもない事実です。
その米軍はいま何をおこなっているか。
同軍は二月、約二万人を増派してバグダッドでの武装勢力制圧作戦を開始し、爆撃や徹底した家宅捜索などをおこない、大量の「テロ容疑者」を拘束しています。
しかし、これは治安改善をもたらさず、テロなどによる三月の犠牲者は、逆に前月比15%増に。十八日には爆弾テロで百八十人以上が死亡するなど、四月に入っても、一日当たり約百人が犠牲になっています。十二日にはイラク国民議会(国会)の建物まで自爆テロの標的となり、議員二人が死亡する深刻さです。
米軍はさらに、バグダッドのイスラム教スンニ派住民地域を囲うように「壁」を建設し、シーア派住民から分離しようとしていますが、これは、戦争と占領が作り出した「内戦状態」の火に油を注ぐだけです。
記者は昨年四月までカイロに駐在し、イラク戦争の一連の過程を取材しましたが、米軍の軍事作戦はつねに、住民の怒りと、さらなる治安悪化を招いてきました。
久間防衛相は、派兵合理化のため、「戦争は終わった」などとのべていますが、二十三日に自動車爆弾攻撃で九人が死亡するなど、米兵死者は今月だけで八十五人に上っています。これを戦争といわずに、いったい何というのでしょうか。
400万避難民の支援こそ
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、イラクでは現在、米軍の軍事攻撃や治安悪化を主な原因に、国内で約百九十万人、隣国のヨルダンやシリアなど国外で約二百万人が避難民となっています。
日本の人口に当てはめれば約二千万人が、住んでいた家を追われるという、想像を絶する状況です。
さらに、世界保健機関(WHO)によれば、いまだに国民の七割が清潔な水を確保できない状況です。
多くの子どもが栄養失調に苦しみ、医療体制の崩壊から、本来なら避けられる病気で命を落としているのです。
UNHCRは十七、十八の両日、ジュネーブでイラク難民支援のための国際会議を開催しました。日本政府に求められるのは、戦争と占領で数十万人の命を奪われたうえ、いまだに塗炭の苦しみにもがくイラク国民の生活支援であり、国連の枠組みでの真の人道復興支援です。これ以上の軍事支援は、イラクを壊滅に導くものであり、きっぱりやめるしかありません。
「日米同盟強化」が狙い
イラクでは、戦争に参加した英軍も部分撤退を開始し、米国でさえ、来年に期限を区切ったイラク撤退法を上下両院で可決しています。
それなのになぜ、日本政府は、「大量破壊兵器の存在」という完全なウソの理由で強行された戦争を擁護し、自衛隊派兵に固執するのか。
そこに、安倍首相の「日米同盟強化」絶対視があることは、当初、派兵延長期間を一年としていながら、二月にチェイニー米副大統領が来日したとたん、二年に延長幅を拡大したことが雄弁に物語っています。
著書『この国を守る決意』で「軍事同盟は血の同盟」という安倍首相は、かつてイラク派兵についてこう語りました。
「サマワの地にいるかつてのオランダ軍、イギリス軍が万が一、テロリストに襲われたときに、助けを求められても、我々は救援にいくことができない」「日米同盟をよりいっそう実効性を高め、より関係を緊密にし、さらに効力を高めていくためには、やはり日本がしっかりと集団的自衛権を行使できるようになるということが大変大切だと思う」(二〇〇五年十月のシンポジウム)
九条改憲により、「米国と海外で戦争をおこなう国」づくりを狙う安倍首相が、イラクをその“モデル”に位置づけていることは明白です。自衛隊のイラク派兵延長を許さないたたかいは、九条改憲阻止と一体です。
空自輸送の9割米兵
イラクに派兵している航空自衛隊の空輸活動のうち、国連職員の輸送が減少し、九割近くが米兵輸送になっていることが二十四日、明らかになりました。
防衛省によると、今年四半期(一―三月)のイラク北部アルビルへの国連職員の空輸回数は七回、のべ百十六人となっています。これまでの国連職員の空輸は「月に四―五回」(防衛省)でしたが、四半期の平均値は月二回程度にとどまっています。
また、防衛省は日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の追及に対して、「空自の空輸活動の七―八割は多国籍軍(米兵)の空輸」だと認めていましたが、四半期については輸送総数五十回に対して国連職員輸送が七回のため、米兵輸送が九割近くになっています。
政府は、空自のイラク派兵継続を正当化するため国連支援を強調していますが、実態はイラクの最激戦地バグダッド―クウェート間の米兵輸送であることを示すものです。
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