2007年4月26日(木)「しんぶん赤旗」
集団自衛権行使容認へ 政府が懇談会設置
究極の解釈改憲で9条骨抜き
市田書記局長が批判
首相訪米前 同盟強化アピール
安倍内閣は二十五日、これまで政府の憲法解釈で禁止されてきた集団的自衛権行使を可能にするため、「個別事例」について研究する有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置しました。安倍晋三首相の訪米を前に検討機関を設置することで、「日米同盟」強化に一歩踏み込む姿勢をアピールする狙いです。
懇談会は、五月十八日に初会合を開き、今秋をめどに報告書をまとめる予定。安倍首相は、これまでの政府の憲法解釈を見直し、海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使に道を開きたい考えです。米側からも集団的自衛権行使を可能とする改憲への圧力が強まっていました。
懇談会の研究対象となるのは、(1)米国など日本以外の国に向かう可能性のあるミサイルの迎撃(2)国連平和維持活動(PKO)で自衛隊と共に行動する外国部隊が攻撃された際の応戦(3)公海上の米軍などの艦船が攻撃された場合の海上自衛隊による反撃(4)有事の際の米軍への武器輸送などの後方支援―の四類型。
塩崎長官は二十五日の記者会見で、懇談会設置の狙いについて「個別具体的な類型に即して、憲法との関係を整理、研究するのが目的だ」と説明。その上で「幅広く、新しい時代に見合った安全保障の法的フレームワークをきちっと考えてほしい」と述べ、解釈改憲に向けた議論に期待感を示しました。
同会議のメンバーには、座長に内定している柳井俊二前駐米大使や、岡崎久彦元駐タイ大使ら十三人が決まりました。
究極の解釈改憲で9条骨抜き
市田書記局長が批判
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日本共産党の市田忠義書記局長は二十五日、安倍晋三首相が設置した集団的自衛権研究のための有識者会議について記者団から問われ、「集団的自衛権の行使は憲法上許されないというのが、これまでの政府の公式見解だった。これを変えるというのが安倍首相の立場だ。明文改憲をめざしながら、それまで待ってられないというので、究極の解釈改憲で海外での武力行使を可能にするための『理論化』を依頼したもので、九条を骨抜きにするものだ」と批判しました。
市田氏は、安倍首相が「戦後レジーム(体制)からの脱却」として九条改憲をとなえ、集団的自衛権の行使を可能にすることを施政方針演説などで掲げていることを指摘しました。
そのうえで集団的自衛権について「『自衛』という言葉があるから、どこからか攻撃を受けた場合のことではないかという語感があるが、戦後、アメリカのベトナム侵略戦争、ニカラグアへの侵略、旧ソ連のアフガニスタンへの侵略はすべて集団的自衛権の行使という名目で行われた。つまり、アメリカなどが自らの侵略行為を合理化するために使われてきた論理だ」と批判しました。
市田氏は「いまの世界の流れは、憲法が時代おくれなのではなく、逆に軍事同盟や軍事力で対応することが時代遅れになっている。憲法九条を守り、究極の解釈改憲である集団的自衛権の行使を認めることはできないという立場で国会内外で力を尽くしたい」と決意を表明しました。