2007年4月26日(木)「しんぶん赤旗」
参院選にむけた政治課題について
CS放送「各党はいま」
志位委員長が語る(要旨)
日本共産党の志位和夫委員長は、二十四日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、いっせい地方選後半戦の結果や参院選の争点、イラク特措法延長問題などについて、朝日新聞の本田優編集委員の質問に答えました。
前進の条件・可能性ひらいた選挙
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――いっせい地方選の総括は。
志位 いっせい地方選後半戦では、重要な前進をかちとり、いっせい地方選挙の前・後半戦のトータルの結果としてみても、全体として善戦健闘といえる結果を得たと思います。
今度の選挙は、自治体の再編、合併などで議員総定数が大幅に減るなど、状況が大変動するもとでの選挙でした。全国ほとんどの自治体で、自民、公明、民主などの「オール与党」対日本共産党という構図のもと、激しい「共産党落とし」のシフトや攻撃もありました。
日本共産党は、前半戦の道府県議選では八議席減でしたが、政令市議選では一議席増やし、後半戦は市区町村議選で議席占有率を伸ばしました。参院選での前進に向けた条件、可能性を開いた選挙となったと思います。
問われる「格差是正」策の中身
――参院選では、何が争点になりますか。
志位 一つは「貧困と格差」です。「格差社会」を否定することは、もはやだれもできませんが、問題はどうやってこれをただすかという中身です。私は、大きくいって三つあると思います。
一つは、税の所得再分配機能――大企業・大金持ちに応分の負担を求め、所得の少ない人に分配する機能が弱まり、大企業・大金持ちを優遇し、庶民を痛めつける「逆立ち」した税制になっている、ここをただすという問題です。
二つ目は、社会保障が、年金、医療、介護など、どの分野でも負担増と給付減が押し付けられ、憲法二五条が保障する最低水準の生活も確保できなくなっている。ここを切り下げから充実に転換する。
三つ目は、人間らしく働くルールが壊されている問題です。派遣労働、請負労働などで横行する無法をただし、人間らしい労働のルールをつくっていく。
「格差是正」というなら、言葉だけでなく、この三つの根源にメスをいれ、まともな方向に転換できるかどうかが問われてきます。
憲法問題は熱い争点に
――対外政策ではどうですか。
志位 憲法問題が、熱い争点になってくると思います。安倍首相は任期中に憲法を変えるといい、改憲手続き法案をこの国会で何が何でも通すとしています。
憲法九条を変えて海外で戦争ができる国をつくる――ここにこの動きの一番の問題があると私たちは批判してきました。もう一つ、それをすすめている勢力が、過去の侵略戦争を反省せず、正当化している「靖国」派だという問題があります。安倍内閣の閣僚は、「靖国」派でほとんどが占められています。そこから、「従軍慰安婦はいなかった」などと歴史をゆがめる下村博文官房副長官のような発言が出てくるわけです。
「靖国」派で固められ、戦争に反省しない勢力が、憲法九条を変えて、海外で戦争する国にしようとしている――これは「美しい国」どころか「恐ろしい国」づくりにほかなりません。この危険な暴走に正面から立ちはだかり、九条を生かした平和外交こそ日本に求められているということを、大いに訴えたいと思います。
「歴史観」がどうあれ公的言明は行動で守れ
――首相は連休中の訪米を控えて、「従軍慰安婦」問題で日本の責任にふれましたね。
志位 一般論としては「責任」とか「謝罪」を言うのです。私との国会質疑で、首相は、軍と政府の関与と強制を認めて謝罪した「河野談話」を認めると答弁しました。そういいながら、「強制連行を裏付ける証拠はなかった」と発言したわけです。これは「河野談話」の事実上の否定です。この間違った発言を撤回しなければ、いくら一般的に「河野談話」を認めますと繰り返しても、問題は解決しません。「謝罪」というなら、間違った発言の撤回が必要です。
――深い歴史観を政府の責任者が語らないというのは、そこに一つの大きな問題があると思いますが。
志位 安倍首相は、首相になる前は自分の「歴史観」を語ってきました。それは過去の侵略戦争を正当化する「靖国史観」そのものでした。安倍氏が首相に就任した後、私たちは、「これまで語ってきた歴史観がどんなものであれ、首相になった以上は、個人的な歴史観を上において国益を損なってはならない」と主張しました。首相は自らの「歴史観」を封印し、ともかくも「村山談話」「河野談話」を引き継ぐと国会の場でのべました。しかし、ときどき地金が出てくるのです。これを許さず、公的言明を行動で守らせる必要があります。
「戦後レジームから脱却」してどこにいくのか
志位 安倍首相のスローガンは、「戦後レジームからの脱却」です。これはたいへんな言葉です。「レジーム」とは文字どおり社会政治体制ということでしょう。米コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が、「レジームを脱却するとは、一体どういう意味なのか」と疑念を投げかけていますが、戦後の日本の体制は、平和主義、国民主権、基本的人権などを原理としていますから、そこから「脱却」したら、戦前に戻るのか。(笑い)
――「従軍慰安婦」問題で、日本の立場が米国にたいして弱まったのでは。
志位 米国だけでなく、日本の道義的立場は、世界にたいして弱まったでしょうね。拉致問題でも、日本政府がその解決を求めるのは正当ですし、私たちも強く求めていますが、ならばなぜ過去の日本の人権じゅうりんに反省がないのかとなるわけです。ワシントン・ポスト紙が、「安倍首相の二枚舌」と題する痛烈な社説を出しました。
――非常にきびしい言葉ですね。
志位 ええ。拉致問題と歴史問題で、人権認識が二重基準だという批判ですね。この問題は、歴史認識とともに、人権認識として、米国では問われている。そのときに「戦後レジームからの脱却」といえば、いったいこの首相はどこに向かおうとしているのか、大日本帝国の時代(笑い)に向かおうとしているのかという懸念すらおこるでしょう。
――「戦後レジームからの脱却」といったら、日米安保から脱却することにもなりかねません。(笑い)
イラク戦争の検証と総括こそ必要
――イラク特措法を延長する法案が出ていますが。
志位 延長には反対です。イラク戦争の開戦以来の四年間の検証と総括を日本政府としてやるべきです。イラク戦争の「大義」の問題、軍事占領の是非、そこでおこなわれた虐殺、侵略戦争と無法な軍事占領を後押しした日本政府の役割を含めた検証と総括です。イラクの現状に対するリアルな認識も必要です。四年間の決算と、今後についての冷静な吟味をおこない、特措法はきっぱり廃止すべきです。