2007年4月27日(金)「しんぶん赤旗」
少年法改悪法案の問題点
強まる警察の捜査権限
仁比参院議員に聞く
少年法改悪法案が衆院本会議で可決し、連休明けにも参院で本格審議が始まろうとしています。参院法務委員で、弁護士でもある日本共産党の仁比聡平議員に同法案の問題点について聞きました。(聞き手・芦川章子)
小学生でも少年院送致
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今回の改悪は、二〇〇〇年の法改悪に続くものです。日本共産党は、少年法の理念を大きく後退させるものとして、断固として反対です。
「改正」案の問題点の第一は、刑事責任能力のない十四歳未満の子どもたちに対する警察の調査を認めたことです。
二つ目は、少年院に送致できる年齢を十四歳以上から「おおむね十二歳以上」に引き下げたこと。小学生でも送致できるようになります。
そのほか、保護観察中に順守事項を守らなかったことを理由に少年院送致ができるようにするという内容などです。
少年法の理念を覆す
では、なぜ「改正」するのか。警察の調査権拡大の理由として、非行・犯罪行為の事実を明らかにするためだといいます。
しかし、これまで警察が十四歳未満の子に一切かかわれなかったのかといえば、そうではありません。家庭裁判所が必要と認める場合は、補充捜査を命ずることもできます。
重大な事件を起こした子の多くは、虐待などで心と体に傷を負い、成長の過程に問題があります。少年法は、教育的・福祉的な手だてをつくし、その子の成長を促し、非行・犯罪に対する深い反省を求めて、再発防止につなげることを柱としてきました。
結局、「改正」案は、まずは児童福祉機関が子どもに向き合うという少年法の理念を覆し、警察が優先して捜査を行い、罰することを最優先するものにほかなりません。
弁護士として少年事件にかかわってきた経験から、警察に子どもの捜査や取り調べをゆだねるというのは、大変な危険があると思います。子どもは、警察官の密室での取り調べに迎合しやすい。おとなより格段にえん罪の可能性が高いのです。
また、十四歳未満の子どもを収容する所が、なぜ少年院なのかという合理的な説明も何らありません。
少年院は、集団的規律のなかで立ち直りを図ることを眼目としています。一人ひとりの複雑な状況に向き合うには適さないし、ましてや十四歳未満の未成熟な子どもの更生の場としてはふさわしくありません。
教育的、福祉的対応こそ
「改正」の理由として、少年事件の増加がいわれています。しかし、少年事件の数は、警察庁の統計でも増えていません。十四歳未満の刑法事件の補導人員は、〇五年は一九八一年の三分の一以下です。事実に基づいた冷静な議論が必要です。
一方、少年事件は複雑化、多様化しています。いま、政治が考えなければいけないのは、警察権力によって抑制することではありません。事件の背景をさまざまな角度から科学的に解明し、一人ひとりの子どもに対する教育的、福祉的な対応を抜本的に強める対策こそが必要です。
法に触れた子どもや、触れる心配のある子どもに対応する児童相談所は、児童虐待、不登校、いじめなどの対応に忙殺されています。児童自立支援施設は、定員がいっぱい。しかし予算は確保されず、拡充は進んでいません。これらの体制の充実こそ不可欠です。
子ども一人ひとりの健全な成長を保障して、非行を抑制、防止する上で、学校などの地域の教育機関の役割は大きいと思います。しかし、政府は教職員ら専門家の増員に背を向けています。
少年法「改正」を強引におしすすめ、子どもの成長、発達を促す社会づくりに消極的な自民・公明与党の責任は重大です。
こうした点も含め、参院では、十分な審議で問題点を明らかにし、廃案をめざします。