2007年5月6日(日)「しんぶん赤旗」

主張

税制「改革」

消費税、財界減税の逆立ち


 経済財政諮問会議と政府税制調査会が税制「改革」の議論を開始しました。当面は考え方の整理にとどめ、消費税増税など具体論は参院選後に議論するとしています。自民党税調の津島雄二会長も、税制を「参院選の争点にすべきではない」と、争点化を逃れる発言をしています。

 争点を隠し、国民の審判を避けて、選挙が終わったら数の力で押し切ろうという政府・与党のもくろみが浮き彫りになっています。

大もとは財界の身勝手

 安倍首相が政府税調に諮問した税制「改革」の柱は次の二点です。「国際競争力を強化し、その活性化に資する」こと。「社会保障や少子化などに伴う負担増に対する安定的な財源を確保」すること。

 異例の具体的な諮問です。政府・与党の日ごろの議論から考えれば、前者が法人実効税率(法人税、法人事業税・住民税を勘案した企業の理論上の所得税負担率)の引き下げ、後者が消費税の増税を指していることは明らかです。

 政府・与党の税制「改革」の大もとは、財界が献金あっせんと引き換えに与党や民主党に実行を求めている財界本位の提案です。

 日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、消費税増税を財源にして法人実効税率を10%引き下げるよう要求しています。

 経済同友会が四月に発表した税制提言は現在40%弱の法人実効税率を35%に引き下げ、消費税を16%に増税するよう主張しています。法人事業税を廃止して地方消費税に置き換え、公的年金は最低限の基礎年金のみに縮小し、企業負担をなくして全額を消費税で賄えという要求です。

 市場に対する支配力が強い大企業は、消費税分をすべて販売価格に転嫁し、仕入れ価格を抑えることで、実質的に消費税を一円も負担せずに済ますことができます。

 財界は「改革」の名を冠して税制を提言しています。しかし、その実態は、国民と中小企業が負担する消費税を大幅に増税し、自らの税や社会保障の負担を減らそうという身勝手きわまりない要求です。

 政府・与党が参院選前に税制「改革」の中身を示さないのは負担増を隠すためだけではありません。財界負担を国民に転嫁する「改革」の本質がくっきり浮かび上がらざるを得ないからです。

 庶民にとって、消費税は生計費そのものにかかる過酷な税金です。消費税は、派遣で働く若者や月四、五万円の年金で細々と暮らす高齢者が、巨額の報酬や配当を得る大企業役員と同じ税率で負担する不公平な税金です。

 消費税が低所得者ほど負担が重くなる逆進的な税制であることは政府も認めています。その増税が、青年や母子家庭、高齢者、障害者など各層に広がる深刻な貧困を、いっそう悪化させることは明白です。

大企業に応分の負担を

 日本企業の公的負担の重さはフランスの二分の一、イタリアの三分の二にすぎません。証券優遇税制の効果で、五千万円を超える所得を申告納税した人の国税負担率はわずか二割にとどまっています。

 税制で新たな財源と言えば消費税しかないような議論はごまかしです。大もうけしている大企業や大資産家に応分の負担を求めることこそ、今やるべき税制改革です。

 争点隠しを許さず、「消費税の増税で大企業に減税する」逆立ちした税制「改革」を断念に追い込むために、参院選に向かって大きく世論を広げていこうではありませんか。



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