2007年5月9日(水)「しんぶん赤旗」
年金の安定運営に逆行
社会保険庁関連法案に対する 高橋議員の質問(大要)
八日の衆院本会議で行われた社会保険庁関連法案に対する日本共産党の高橋千鶴子議員の質問(大要)は次のとおりです。
本法案は、これまで年金業務を担ってきた社会保険庁を解体し、新たにつくる非公務員型の「日本年金機構」に年金業務を行わせ、その業務の多くを民間委託できるようにする、まさに年金運営の民営化法案です。
七千万人を超える国民が加入する公的年金は、憲法二五条が定める国民の生存権を保障する大切な制度です。だからこそ、年金保険料の徴収から給付まで一連の年金業務を国が直接責任をもって一体的に運営し、公務員が運営業務を担い、継続性と公正性を担保してきたはずです。
確かに、これまでの社会保険庁の運営には見過ごせない問題があります。しかし、国民の大切な年金業務を民間業者にゆだねることで、どうして年金への「国民の信頼」を高めることになるのでしょうか。
いまやるべきは最低保障年金制度を確立するなど、国民が安心できる公的年金制度に改善することではありませんか。
公的サービスの民間委託の弊害は明らかです。
この間、損保ジャパン副社長だった村瀬長官の下で、徹底した「ノルマ主義」と、強引な収納率の引き上げが進められてきました。この結果が、三十八万件を超える不正処理を引き起こしたのではありませんか。採算優先の民間手法は、すでに国民との矛盾を激化させ、破たんしているのではありませんか。
法案は、年金の適用、徴収、記録管理、相談、裁定、給付などの業務をバラバラにし、その多くを競争入札で民間委託するとしています。委託業者や従業員が数年ごとに入れ替わる制度で、どうして確実で安定した運営が保障できますか。
「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」の「最終とりまとめ」では、公的年金制度は「国の責任のもとに、確実な保険料の収納と給付を確保し、安定的な運営を図ることが必要」としていたではありませんか。この立場に本法案は逆行するのではないでしょうか。
また、社会保険庁の解体と「機構」への移管にともなって、正規・非常勤あわせて約一万人もの社保庁職員を削減することが計画されています。年金業務に習熟した公務労働者を大幅に削減して、年金制度の安定した運営ができますか。
法案は、あの国鉄民営化法にさえあった「職員の引き継ぎ規定」をいっさい設けていないのはなぜでしょうか。
さらに重大なのは、収納対策の強化です。
法案は、国民年金の保険料の未納者から、国民健康保険証をとりあげて、期限付きの「短期保険証」を発行するとしています。なぜ年金と健康保険という目的の異なる制度をリンクさせるのですか。これは、年金保険料を納めなければ、病院に行くなというに等しい、国民いじめではありませんか。
また、保険料の滞納者に対する強制徴収を国税庁に委任するとしています。信頼にもとづく保険制度と納税義務はまったく性質の違うものであり、国税庁の権限をちらつかせて取り立てを強化すれば、年金制度への国民不信をいっそう深めるのではないですか。
年金情報の流失も、強く懸念されています。全国一律のオンラインシステムから、絶対に情報が漏れないという保証がどこにあるのですか。民間業者に提供された個人情報が、勝手に流用されたり加工されたりしない歯止めはありますか。市場化テストに参入する人材派遣会社や債権取立会社が、年金情報を、民間保険の勧誘や商品開発など、自社の仕事に活用しないといいきれますか。
保険料の流用問題についてです。そもそも国民の保険料は給付に充てるものであり、給付以外に流用することは禁じられていたはずです。法案は、なぜ保険料を事務費に充てることを「特例措置」から恒久規定に変えたのですか。
一方、厚生年金病院や社会保険病院は、不採算医療など地域医療を支える中核病院としてなくてはならない存在です。ムダな大規模施設とごっちゃにして廃止・売却することは許されません。すべて国の責任で存続させるべきです。
「百年安心」などといって年金制度の改悪をおしすすめてきた政府・与党が、その責任を棚上げ、国民の年金不信の矛先をすべて公務員に責任転嫁することは決して許されないことをきびしく指摘し、質問を終わります。
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