2007年5月12日(土)「しんぶん赤旗」
環境など全人類的課題と階級闘争との関連は?
〈問い〉 「階級闘争」という概念は、賃金や労働時間にかかわる部分では理解できるのですが、環境など全人類的課題になるとはっきりしません。関連して、中国など社会主義をめざす国の環境問題がマスコミで取り上げられていますがこれらをどうみていますか。(京都・一読者)
〈答え〉 地球環境や平和の問題には、「全人類的課題」としての側面、つまり人類の生存を守るために国境や階級・階層の違いも超えて解決に努力することが求められるという性格があります。同時に、これらの課題をめぐっても、階級間のするどい利害対立が存在しているのではないでしょうか。
地球環境問題の背景には、エネルギー消費量を例にとれば20世紀の100年間で数十倍になった急激な生産力の拡大があります。これは、マルクスが「生産のための生産」とよんだ、利潤追求のためにはどんな制限ものりこえて生産を拡大するという資本主義の特質によってもたらされたものです。それにもかかわらず、資本主義のもとでは、利潤第一主義という資本主義的生産の特質に制約されて、巨大な生産力を適切に制御することができません。
地球温暖化やオゾン層の破壊などの地球規模の環境破壊はその現れです。
日本共産党綱領は「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾は、現在、広範な人民諸階層の状態の悪化、貧富の格差の拡大、くりかえす不況と大量失業、国境を越えた金融投機の横行、環境条件の地球的規模での破壊…など、かつてない大きな規模と鋭さをもって現れている」と述べています。
こうした否定的現象を克服していくことは「全人類的な課題」ですが、直接にせよ間接にせよ資本家階級とのたたかい抜きに実現できることではありません。それは、たとえば、イラクでの武力行使や地球温暖化防止対策への不参加というブッシュ政権の行動と、アメリカ石油資本の利害との関係を見ただけでもわかると思います。
いま、社会主義をめざす国ぐにと資本主義の国ぐにの共存と競争が、新しい段階を迎えようとしています。
戦争を許さない平和のルールの確立や、貧困・社会的格差の解決、南北問題、地球環境問題および資源・廃棄物の問題など、人類の存続を維持するうえで重要になっている諸問題に、どう対処するのか。それは資本主義という体制の「自己調整能力」が問われるだけでなく、中国やベトナムなどの社会主義をめざす国々も、資本主義に代わるべき社会進歩の有効な形態であるのかどうかが問われる問題です。これらの課題にどちらが有効な対応力をもつかによって、二つの体制の優位性が測られる時代を迎えているのです。
社会主義をめざす国々は、こうした問題にたいして独占資本主義の諸国にはない理性を発揮する条件を持っています。しかし、それは社会主義の看板を掲げるだけで自動的に実現するものではなく、社会主義をめざしている政権と国民自身の努力が必要です。(石)
〈参考〉不破哲三著『21世紀の世界と社会主義』
〔2007・5・12(土)〕