2007年5月17日(木)「しんぶん赤旗」

月307時間労働 過労自殺

労災に逆転認定

東京労災保険審査官


 東京都内の二つの雑誌社で仕事を掛け持ちしていた女性(26)=当時=が過労による精神疾患で自殺した問題について、東京労働者災害補償保険審査官は、新宿労働基準監督署の決定を取り消し、労災認定しました。東京過労死弁護団事務局長で八王子合同法律事務所の尾林芳匡(よしまさ)弁護士が十六日、記者会見で明らかにしました。

 この女性は二〇〇四年十月一日から、二つの出版社でアルバイトをしており、労働時間は二社合計で月三百七時間を超え、同月二十九日に自殺しています。

 請求人である両親が、女性の自殺が業務上の災害だと労災認定請求しましたが、新宿労基署署長は〇六年一月、業務外の災害と認定しました。しかし、東京労災保険審査官は、同労基署長の決定を取り消して労災認定を決定し、五月十五日付で請求人に通知しました。

 労基署は過労自殺について、心理的負荷が強い出来事がない限り、中程度以下の負荷となる出来事が複数あっても、業務での起因性を認めない傾向にあります。今回の認定は労災保険審査官が、時間外労働やパワーハラスメントなど、負荷を生ずる複数の出来事を総合的に合算し、女性の強い負荷になったと認定したものです。

 尾林弁護士は、労災保険審査官が、労基署の決定を取り消して逆転の労災認定することは全国的にめずらしいとし、「複数職場を掛け持ちする労働者の救済に資するものだ」とのべました。

 会見には女性の母親(55)も同席し、今回の認定について「娘のつらさ、苦しさを理解してくれたと思う」と語りました。



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