2007年5月22日(火)「しんぶん赤旗」

主張

新基地調査に軍艦

旧日本軍の蛮行がよみがえる


 政府は、米軍新基地建設予定地の米軍キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)沿岸部に海上自衛隊掃海母艦「ぶんご」(五七〇〇トン)を投入し、約四キロ四方の海域でジュゴンやサンゴの生態を把握するための環境現況調査を強行しました。

 新基地計画は沖縄県民の強い反対で沖縄県も名護市も容認しておらず、事実上頓挫しています。政府が軍艦まで投入して現況調査を強行したことは、新基地建設にむけた強権姿勢をあらわにしたものです。

むきだしの県民敵視

 アメリカ政府は先の日米安全保障協議委員会(2プラス2 外務・防衛担当閣僚協議)で新基地建設を急ぐよう日本側に圧力をかけました。安倍内閣が軍艦を投入して、建設の前提になる海洋生物の生息状況を事前調査するのはそのためです。アメリカから尻をたたかれ、「県民の理解を得る」といった態度表明もほごにして、現況調査を強行するのは安倍内閣の対米追随の異常性、危険性を示すものです。

 掃海母艦「ぶんご」は、機雷敷設や機雷掃海のための艦艇ですが、海上や空中の目標を破壊する76ミリ単装速射砲を装備しています。毎分百発もの弾丸を発射できます。「ぶんご」の投入には、大型の軍艦をみせつけることによって海上デモで違法調査を阻止しようとする県民を脅し、反対運動をあきらめさせるねらいが見え見えです。

 久間章生防衛相は日本共産党の赤嶺政賢議員の追及にたいして、「海上の治安状況が悪化した場合には自衛隊による警備行動がないとはいえない」とまでいっています(十八日衆院安保委員会)。県民を自衛隊の警備行動の対象にするというのです。県民はテロ勢力ではありません。憲法が保障する平和的生存権を行使して、政府に新基地建設の断念を求めているだけです。防衛相が県民のたたかいを敵視し、自衛隊に県民を弾圧させることをちらつかせる発言をおこなったことは、安倍内閣の強権姿勢をむきだしにしたもので許されるものではありません。

 自衛隊という軍隊が新基地建設を強制するための行動にでたことは、太平洋戦争で日本の唯一の地上戦となった沖縄戦で、旧日本軍が沖縄県民に言語に絶する犠牲を強要した記憶を呼び起こさせています。

 太平洋戦争で政府は沖縄を「本土防衛」の捨て石にし、沖縄戦では県民を守るどころか住民を米軍の攻撃を防ぐ盾にしました。日本軍は県民の多くが避難する本島南部に軍の主力を移し住民を戦火に巻き込みました。洞窟(がま)に逃げ込んでいた住民を追い出し、敵に見つかるといって泣いている赤ん坊を殺したことも生き残り住民の証言であきらかです。住民たちに自決用の手りゅう弾を渡し、集団自決に追いやったのも日本軍です。米軍より日本軍が怖かったという証言もあるくらいです。

 沖縄県民の苦痛の歴史を考えれば、軍艦の投入などできないはずです。にもかかわらず政府が軍艦を投入したというのは、アメリカのためには沖縄県民を再び捨て石にするものといわれても仕方がありません。

県民の広がる怒り

 アメリカ政府が安倍内閣に新基地建設を急がせるのは、アメリカが世界各地でおこす先制攻撃戦争の態勢づくりを急いでいるからです。政府は「人殺しの基地をつくらないで」という沖縄県民の叫びを正面から受け止めるべきです。政府の強権を許さず、新基地反対の運動をさらに広げることがいよいよ重要です。



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