2007年5月26日(土)「しんぶん赤旗」

米軍基地建設で強制移住

英領島民の帰還 改めて認める

控訴院判決


 【ロンドン=岡崎衆史】英控訴院は二十三日、米軍基地建設のために強制移住させられたインド洋に浮かぶ英領チャゴス諸島の元島民に帰還権を認めた一審判決を支持し、これを不服とした英政府の控訴を棄却しました。英政府は最高裁への上告を検討しています。元島民側は「非常にうれしい」と歓迎し、一刻も早く帰還が可能になることを希望しています。


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 判決は、元島民の帰還権について、人類の「最も基本的自由の一つ」と位置づけ、その重要性を指摘。また、政府が女王による枢密院令で帰還を禁じたことについて「違法で、権力の乱用だ」と断じました。

 英国は一九六六年、チャゴス諸島の六十を超える島のうち、最大のディエゴガルシアを五十年間の予定で米国に貸与。米国は全島を基地化しました。その際、英政府は米軍側の要求を受け、七三年までにチャゴス諸島全域の住民約二千人を近隣のモーリシャスに船などに無理やり乗せて強制移住させました。退去の際には、体の弱い子どもたちが死亡。多くは移住後も、職業や家屋を持てず、貧困状態でした。

 英高等法院は二〇〇〇年十一月、強制退去を違法として帰還を認める判決を出しました。しかし基地を使用している米国から圧力を受けた英政府は〇四年、安全上の理由を挙げ、英女王の枢密院令を使い、判決を強引に覆して島民の帰還を禁じました。〇六年五月、この特例を再び高等法院が覆し、帰還を認める判決を出しました。今回の判決は、これを不服とした政府の控訴を棄却したものです。

 ただし、判決は元島民に対して、現在米軍基地のあるディエゴガルシア島への帰還は認めていません。

 ディエゴガルシア基地は、イラクやアフガニスタンへの出撃基地として利用され、B2ステルス爆撃機の米本土以外の基地の一つです。

 現在、チャゴス諸島の元島民とその子孫約四千人は、モーリシャス、セーシェル、英国に居住。強制移住させられた二千人のうち、生存しているのは半数に満たないとみられています。



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