2007年5月27日(日)「しんぶん赤旗」

窮地の米、収拾策模索

イラク掃討作戦で犠牲増


 イラクでの武装勢力掃討作戦が犠牲を拡大するもと、窮地のブッシュ米政権は、九月までに同作戦の「成果」が上がらない場合の収拾策の検討を進めているもようです。その際、超党派委員会のイラク研究グループ(ISG)の勧告に立ち返る姿勢を示唆しています。

 米政権は、掃討作戦を夏まで続け、その「成果」についての報告を現地駐留司令官から九月に受けることにしています。

 ブッシュ大統領は二十四日の記者会見で、この報告を受けた後の「ある時点」で米国は「今とは異なった配置状況」に置かれると述べ、その収拾策の基本となるのはISGの勧告だと明言しました。現職につくまではISGの一員だったゲーツ国防長官も同日の記者会見で、これを確認。任務が変われば駐留部隊の数も減ると述べました。

 二十八日には、ISGの勧告に沿う形でイラク問題に関する米イラン直接対話が実施されます。

 昨年十二月に発表されたISG勧告は、イラク戦争の行き詰まりを打開するため、▽米戦闘部隊を撤退する▽イラク駐留米軍の任務をイラク軍訓練に限定する▽イランやシリアとの直接対話を開始する―ことなどを提言しました。

 ブッシュ政権は当初、この受け入れを拒否。ISG勧告に対抗したネオコン(新保守主義者)派の提言に応じる形で、首都バグダッドなどの治安回復のためとして約三万人の米軍部隊を増派しました。増派は段階的に実施され、六月中旬まで続きます。

 しかし米国内では来年十一月の大統領選に向けた運動がすでに激化し、イラク戦争が最大の争点となっています。同戦争の争点化を避けたい米政権としては、米兵の犠牲が拡大する掃討作戦をいつまでも継続するわけにはいきません。

 ニューヨーク・タイムズ紙二十六日付は、現在約十六万人のイラク駐留部隊を来年選挙時に十万人程度に減らす構想が政権内で検討されていると報道。ゲーツ氏やライス国務長官は支持しているが、現地司令官やチェイニー副大統領らは賛成していないとしています。

 英紙ガーディアン二十三日付は、ブッシュ政権が米軍を減らす代わりに、国連や、日本、欧州連合(EU)諸国の対イラク関与の拡大を求めることを計画していると報じています。(坂口明)



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