2007年6月1日(金)「しんぶん赤旗」
日本教員の地位調査
ILO・ユネスコ、共同派遣へ
国際労働機関(ILO)と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の共同専門家委員会(CEART=セアート)が年内にも日本の教員の地位をめぐって調査団を送ることが明らかになりました。全教(全日本教職員組合)が三十一日に記者会見し、派遣の通知があったことを発表したもの。CEARTが調査団を送るのは世界的にもまれです。
ILO・ユネスコは、一九六六年、「教員の地位に関する勧告」をだし、教員の評価をおこなうさいは客観的でなければならず、教員に不服をのべる権利を与えなければならないとしました。ところが文部科学省がすすめている「指導力不足」の教員を転職させる政策や教員評価について、判断基準が恣意(しい)的になっているなどとして全教は二〇〇二年、「文部科学省は勧告を順守していない」とCEARTに申し立てていました。
CEARTは〇三年、全教の申し立てを認め、文部科学省と全教が建設的な交渉をするように勧告し、自主的解決ができない場合、調査団派遣の用意があるとしていました。CEARTからの通知は「状況の調査とすべての当事者に問題を解決するための提案をおこなう意向を持っている」としています。
記者会見で全教の新堰義昭副委員長は、調査団の派遣を歓迎し、文部科学省が受け入れたことを評価し、「CEARTの勧告内容を基準に調査・検証・専門的助言などがおこなわれるだろう」とのべました。国会で「指導が不適切な教員」の管理を厳しくすることを狙う法案などが審議されていることについて、「教員の地位に関する勧告」を順守すべきだと語りました。
日教組(連合加盟)も同日、調査に全面的に協力すると声明を発表しました。
日本の教員評価制度
勧告の基準満たさず
国際労働機関(ILO)とユネスコの共同専門家委員会(CEART=セアート)が年内にも、日本の教員の地位をめぐって調査団を送ることが明らかになりました。
監視し促進へ
ILOとユネスコが一九六六年にだした「教員の地位に関する勧告」は、教育の目的で最も重要なものは「平和のために貢献をすること」と指摘し、「教員の正当な地位」の重要性を強調しています。教育の仕事は専門職だとして、「厳しい、継続的な研究を経て獲得され、維持される専門的知識および特別な技術を教員に要求する」としています。だからこそ、学問上の自由を享受することや、さまざまな権利を認めています。
教員評価についても、「教員の仕事を直接評価する場合には、その評価は客観的でなければならず、その評価は当該教員に知らされなければならない」「教員は、不当と思われる評価がなされた場合に、不服を申し立てる権利をもたなければならない」と定めています。政策を決めるときに教職員団体がかかわることものべています。
この「教員の地位に関する勧告」の適用を監視し、促進するのがCEARTです。ILO、ユネスコが任命する十二人の著名な法律家や教育学者からなっています。
文部科学省がすすめている「指導力不足教員」の認定と排除、賃金や処遇などに直結する人事考課制度などの新しい教員評価制度は、「教員の地位に関する勧告」に真っ向から反するものです。
「指導力不足教員」でいえば、文部科学省のいう「指導が不適切」の定義はあいまいで、実際は都道府県教育委員会に判断はまかされています。静岡県教育委員会の例では、「職務上の指示・命令に率直に従わない」「自分の考えをもたない」「コンピューター活用能力に欠ける」などが列挙されています。恣意(しい)的・主観的な判断になる危険性があります。
「指導力不足」と認定された教員は、学校から切り離されて研修を受けますが、「雪かき」「倒木の運搬」など懲罰的なものとなっていることも明るみにでています。
部分的改善も
CEARTは〇三年、全教の申し立てを認め、勧告をだしました。「指導力不足教員」政策については、“不服を申し立てる権利が教員に与えられている証拠がない”などをあげ、「教員の地位に関する勧告」の水準を満たしていないとしました。
新しい教員評価制度についても、教員団体との十分な協議が欠けていることや、主観的評価がおこなわれているのは明らかと指摘しました。
全教はCEARTの勧告を「日本の教職員組合運動の共有の財産」と見解を出し、勧告をもとに制度改善を求め、部分的ですが改善も勝ち取ってきました。
調査団は、CEARTのこれまでの勧告に基づいた助言などをおこなうと見られています。全教はCEARTに対し、文部科学省や教育委員会、教職員組合からの調査には、政府代表と教職員組合代表を同席させ、傍聴もできる公聴会方式にすることなどを求めています。(内野健太郎)
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