2007年6月2日(土)「しんぶん赤旗」
国の責任で全額補償を
社保庁解体法案と年金特例法案
笠井議員の反対討論(大要)
一日未明の衆院本会議で行われた社会保険庁解体・民営化法案と年金特例法案に対する日本共産党の笠井亮議員の反対討論(大要)は次の通りです。
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年金の特例法案についてです。
五千万件をこえる年金記録が「宙に浮いて」いる問題は、そもそも国民にはまったく責任はありません。年金記録の管理は国の責任であり、記録の不備で年金が減額された場合、国の責任で、時効を撤廃し、全額補償すべきことは当然です。
記録訂正なく
今回の特例法案と政府・与党の「救済策」なるものの最大の問題は、本人が申請し、保険料を納めていたことを証明しなければ、年金記録が訂正されず、被害が補償されないという、従来の枠組みはまったく変わっていないことです。
委員会審議で、本人が記録の誤りを申請したにもかかわらず、証拠がないとして却下された二万人の再調査について、政府の責任でおこなうことを、厚生労働大臣は否定しました。却下するならば、保険料納付がないという立証責任は国が負うべきものです。被害者本人に、保険料納付の立証責任を負わせることは、被害補償など問題解決の道を閉ざすものにほかなりません。
また、すでに時効になった人を救済するといいますが、その対応は、単に広報や個々に知らせるように「要望する」という程度にとどまるものであり、権利の回復につながる保証がないことは、明らかであります。
加えて、時効の取り扱いが、社会保険庁ではなく、三年後につくられる「日本年金機構」に引き継がれることも問題です。採算優先、人員削減の非公務員型「日本年金機構」には、長期の年金記録の管理ができる保証は、まったくありません。
解決方策ない
社会保険庁解体・民営化法案についてです。最大の問題は、五千万件をこえる所在不明の記録について解決するめどもまともな方策もしめさないまま、社会保険庁を解体・民営化しようとしていることであります。これは、国の責任放棄以外の何ものでもありません。問題の処理はそれこそ「宙に浮き」、新たな記録の消失を生み出しかねません。
本法案の第一の問題は、年金業務を民営化することです。
すでに社会保険庁は、年金の裁定や強制徴収など、限られた業務を除いてほとんどの業務を外部委託に移してしまっています。しかも、その担い手は派遣社員などの不安定な雇用に委ねられています。いくつかの自治体で、現に、外部委託した業者がさらに再委託したことで住民基本情報の流出事件が大問題になっています。これを解体・民営化すれば、個人情報の流出、年金記録の管理などさまざまな新たな問題をひきおこすことは明らかです。
民間委託の目的は、人員抑制によるコストの削減にあり、非正規雇用の増大を厚労省自らが後押しすることになります。一方、この間の不祥事の責任を、社会保険庁職員にすべて押し付け、分限処分を明記したことは、処分の済んだ事案に新たに処分を科すという二重の制裁にほかならず、認められません。こうした一連の重大な問題点については、ほとんど手が付けられていない審議の現状では、年金制度への国民の信頼を到底得ることなどできません。
第二に、本法案には、年金保険料の流用を正当化する規定がもりこまれています。
国民の支払った保険料は、原則、保険給付に充てるべきです。
ところがこの間、保険料を財源として、グリーンピアなどの大規模施設の建設や福利厚生と称した無駄遣いがおこなわれてきたことに、国民の批判が集中しました。
今後も、これまで同様、「福祉施設費」という名目で、毎年約二千億円の保険料が流用できることになっています。事務費の五割以上を占める「システム関係費」も、特定の民間大企業とその子会社のシステム開発や運用に使われることになります。
強引な徴収も
第三は、制度が異なる年金と健康保険を結びつけて、強引な保険料徴収をおこない、年金保険の収納を強化しようとする問題です。
国保保険料を全額払っていても、年金保険料が未納という理由で、国保保険証を取り上げて、期限付きの「短期保険証」を発行する。この押し付けが二百万人に及ぶというようなことは決して許せません。直ちに撤回すべきであります。
そのうえ、保険料と税というまったく違う制度まで結びつけ、税務署がのりだして、滞納者から保険料を強制徴収することまでもりこまれています。このような、強引な徴収は認められません。
最後に、本法案には、年金不信の根本である年金制度の「空洞化」を解消する方策がまったく示されていません。
月額一万六千円の高い保険料と、四十年間納めても満額六万六千円にしかならない低い給付の現実。厚生年金に未加入の事業所が三割もあるなど、年金の「空洞化」は深刻であります。その解決を国民は強く求めています。無年金者の増加も、その背景にあるパートや派遣、アルバイトという不安定雇用の問題の改善も、急務です。
このような問題を放置したまま、本法案を強行すれば、国民の年金制度へのいっそうの不信を拡大することは必至であり、廃案しかないことを強く指摘し、討論をおわります。
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