2007年6月3日(日)「しんぶん赤旗」

「政治とカネ」、「消えた年金」問題について

志位委員長の訴え(要旨)


 日本共産党の志位和夫委員長が二日、東京・JR新宿駅東口でおこなった緊急国会報告(要旨)は次の通りです。

 今日は、いま国会で大問題になっている二つの問題――「政治とカネ」の問題、「消えた年金」の問題について報告いたします。

「政治とカネ」――安倍首相の二重の責任が問われている

 「政治とカネ」の問題をめぐっては、松岡利勝農林水産大臣の自殺という痛ましい事件がおこりました。私は、松岡大臣にたいして、まずお悔やみをもうしあげます。同時に、政治家としての身の処し方としては、真実を国民に語ることこそ、責任ある態度だったということもいわなければなりません。

 この問題で、いま何よりもきびしく問われているのは、安倍首相の責任です(拍手)。首相には、二重に深刻な責任が問われています。一つは、松岡大臣を任命したということそのものの責任です。松岡大臣が「政治とカネ」をめぐって多くの疑惑につつまれた政治家であることは、広く知られていました。そうした疑惑を知りながら、大臣に任命した責任は重いといわなければなりません。

 さらにいま一つ、より重大な責任があります。それは、松岡大臣の事務所費疑惑、光熱水費疑惑、さらに緑資源機構にかかわる疑惑が、つぎつぎと指摘されながら、最後まで大臣をかばいつづけた責任です。すなわち首相が、「罷免の責任」を果たさなかった責任はきわめて重大であります(拍手)。きちんとこの責任を果たしていれば、今回のような痛ましい事態もなかったのではという声がおこっていることは当然であります。

幕引き許さず真相徹底究明を――それ抜きに制度いじりに逃げ込むことは許せない

 この問題は、松岡大臣が亡くなったことで、幕引きがされては絶対になりません。

 事務所費問題が問われていながら、シラを切りとおしている政治家は、自民、民主に多数存在しています。

 緑資源機構の官製談合問題は、天下りと引き換えの事業の受注、そして受注企業からの政治家への献金という、典型的な政官財の癒着のなかで、国民の税金が食い物にされていたという問題です。受注企業から献金を受けていたのは、これも自民、民主議員の双方にわたっています。

 私は、安倍首相と政府、自民、民主両党に、真相を徹底的に明らかにすることを強く求めるものであります。(拍手)

 いま政治資金規正法の改定の議論がされています。与党案は領収書の添付を五万円以上に限るなどそれ自体がザル法だという問題がありますが、この問題で何よりも重大なのは、真相解明抜きに制度いじりの議論にすりかえる、制度いじりに逃げ込む、これは疑惑隠しそのものだということです。(拍手)

 「政治とカネ」の制度の改革というなら、この問題での感覚マヒをつくっている企業・団体献金を禁止し、政党助成金を廃止することこそ必要だということを、私は強く訴えるものであります。(拍手)

「消えた年金」問題――責任は歴代厚生労働大臣が共同して負っている

 つぎに「消えた年金」問題について、日本共産党の立場をお話しします。

 五千万件もの年金記録が、「宙に浮き」――だれのものか分からなくなっている。そのために受け取れるはずの年金が受け取れなくなる。このことへの国民の不安と怒りが広がっています。

 国民が保険料を納入したのに、それに見合う給付が消えてなくなる――これは国が詐欺をやっているにひとしいことであって、どんな理由があっても絶対に許されないことです(拍手)。国の責任でただちに解決のための真剣な対策をおこなうことは、あたりまえのことです。(拍手)

 なぜこんなことが起こったのか。責任はだれにあるのか。この問題で、国民にはいっさい責任はありません。責任はひとえに政府が負っており、したがってその解決も国の責任においておこなわれるべきです。

 一九九七年、政府・厚生省所管の社会保険庁は、それまで国民年金や厚生年金など年金ごとに違う番号で管理されていた仕組みを変え、全国民共通の基礎年金番号に統合するという制度を導入しました。ところが、このときに氏名や生年月日などが一致しないことなどから、基礎年金番号に統合できない年金記録が膨大に生まれました。にもかかわらず、政府は、それを国民に知らせず、それを解決する抜本的な対策をとらないまま、十年が経過してしまいました。

 ですから責任の所在は明瞭(めいりょう)です。膨大な「宙に浮いた」年金記録の存在を知りながら、国民に伝えず、抜本的対策をおこたってきた歴代政府、厚生労働大臣に、この問題を引き起こした責任があります。(拍手)

 ここに持ってきましたが、自民党は、基礎年金番号を設計・導入した菅直人大臣に責任があるとのビラをまいています。公明党も同じことをいっています。もちろん菅氏に責任があることは明らかです。しかし、責任を負っているのはそれだけでありません。その後を引き継いだ前首相の小泉純一郎厚生大臣、公明党出身の坂口力厚生労働大臣、そして柳沢現厚生労働大臣など、歴代厚生労働大臣が、責任を共同で負っているのであります(拍手)。私は、見苦しい責任のなすり合いはやめ、そろって国民に謝り、解決のためにまじめに力をつくすべきだと思います。(拍手)

五千万の「宙に浮いた」年金――調査対象を「三条件一致」に限定するな

 安倍首相は、「まじめに払ってきた年金が給付されない。こんな理不尽なことがあってはならない」とのべました。それならば、私は、政府の方針をつぎの三つの点で見直すべきだと主張するものです。

 第一は、「宙に浮いた」年金記録――五千万件を本来の持ち主のもとにどうやって統合をはかるかという問題です。

 安倍首相は、「宙に浮いた」五千万件について、「一年で突き合わせる」――五千万件と基礎年金番号を照らし合わせると言明しました。こう聞きますと、五千万件のすべてが一年で解決されると思われるみなさんがいらっしゃるかもしれない。しかしそれは違うのです。

 政府の方針には、大きな問題があります。それは照らし合わせて、「同一人物の可能性がある」として本人への問い合わせがされ、調査対象となるのは、「氏名、性別、生年月日」の三条件が完全に一致した場合に限られていることです。三条件のうち一条件でも違っていた場合、たとえば「秀一(ひでかず)」を「シュウイチ」とコンピューターに入力されていた場合、結婚して姓が変わった場合などは、除外されてしまいます。

 これでは五千万件の「宙に浮いた」年金記録のうち、本人への問い合わせがされるのは、ごく一部に限られてしまうことになります。

 だいたい三条件が完全に一致した場合に限って統合するという作業は、現役世代では、まったく同じ作業をすでに一九九七年の基礎年金番号導入時におこなっているのです。その結果が、五千万件の「宙に浮いた」年金記録なのです。同じ作業を繰り返すだけで、どうしてこの問題が解決するでしょうか。ここには真剣に問題を解決しようという態度がみられないではありませんか。(拍手)

 三条件のすべてが一致しなくても、部分的一致であっても、「同一人物の可能性がある」として本人への問い合わせをすべきです。

 そして「同一人物の可能性がある」とされた方にたいしては、「宙に浮いた」年金記録の情報をきちんと提供し、国の責任において問題解決をはかるべきです。(拍手)

国民にだけ立証責任を負わせるやり方をあらため、国が責任をもって調査すべき

 第二は、問題解決をはかるさいに、本人が申請し、保険料を納めていたということを証明しなければ、年金記録が訂正されず、被害が補償されない――もっぱら国民にだけ立証責任を負わせるやり方を、ただちにあらためることであります。

 衆院厚生労働委員会の審議で、わが党の高橋千鶴子議員が、本人が記録の誤りを申請したにもかかわらず、「証拠がない」として却下された二万人を再調査すべきだと求めましたが、厚生労働大臣は再調査を否定しました。これはまったく理不尽な態度であります。何十年も前の領収書や給与明細をもっている人などはほとんどいません。しかし国が記録をなくすことは許せることではありません。「証拠がない」というならば、責任を問われるのは、国民ではなくて国の側なのであります。(拍手)

 政府は、もっぱら国民にだけ立証責任を負わせるというやり方をただちにあらため、文書による記録証拠がなくても、国が責任をもって調査し、何らかの手がかり――状況証拠があれば支給する、たとえば職場にいたことを同僚が証言するなどの裏づけがあれば支給対象にするという基本姿勢にたって解決をはかるべきであります。(拍手)

解決の手だてもめどもないまま、社会保険庁をつぶすのは、最悪の責任のがれ

 第三の問題は、政府が、このように五千万件の「宙に浮いた」年金問題などについて、その解決のために、何らまともな手だてをとらず、解決のめども示さないまま、この問題の解決に直接責任をおっている社会保険庁を解体し、民営化しようとしていることであります。これは国が責任をもって問題解決にあたることを不可能にする、それを放棄するものであって、絶対に許せないことであります。(拍手)

 保険料の流用問題をはじめ社会保険庁の抜本改革は必要であります。しかし、数十年という単位で国民の保険料をあずかり、運用するという公的年金の仕事を、責任をもって安定・確実に遂行しようとすれば、それに国が直接責任をもつことはどうしても必要なことです。そのための組織をつぶして、民間まかせにすることは、最悪の責任のがれといわなければなりません(拍手)。社会保険庁を分割・民営化する法案は、きっぱり廃案にすることを強く求めるものであります。(拍手)

 日本共産党は、国民の年金受給権を守るために全力をあげます。そして最低保障年金制度の創設に踏み出し、国民だれもが安心できる年金制度をつくるために奮闘することを、お約束するものです。(拍手)

たしかな野党・共産党の前進で、自公政権の暮らし破壊の暴走にストップを

 最後にみなさん、「消えた年金」問題をめぐって、どうしてこれだけ国民から深い怒りが噴き出してきたのか。その根っこには、年金制度そのものを大改悪したことへの怒りがあると思います。「百年安心」といって、負担は毎年上げる、給付は下げるという、ひどい仕組みを、三年前に与党は強行しました。

 さらにそのさい、「年金財源のため」と称して定率減税を廃止し、庶民大増税を決めました。「言いだしっぺ」は公明党であり、自民党と一体にこれを強行しました。それは、この六月から住民税大増税という形で庶民の家計を襲おうとしています。

 庶民の暮らしに痛みをあたえて、それを痛みに感じない政治にこそ、国民の怒りが集中しているのです。日本共産党は、「消えた年金」問題の解決に力をつくすとともに、貧困と格差が広がるもとで、社会保障を切り捨て、定率減税廃止・消費税増税など庶民に大増税をおしつける安倍・自公政権の暴走にストップをかけるためにがんばります。(拍手)

 どんな問題でも、間違った政治に正面から立ち向かい、国民の立場にたってがんばるたしかな野党が、いまこそ必要です。どうか参議院選挙では、この党を大きくのばしてください。(大きな拍手)



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