2007年6月4日(月)「しんぶん赤旗」
イラク米軍
駐留長期化へ計画着手
一部撤退後 「2国間協定」検討
【ワシントン=山崎伸治】米政府は米軍のイラク駐留について、長期計画の策定に着手しています。そのなかで、現在十五万人にまで増派されているイラク駐留部隊を二〇〇八年末までに縮小し、その後は、イラク政府との「二国間協定」に基づいて、一定の部隊を駐留させることを検討しています。
長期計画の策定は、現在イラクで進めている武装勢力に対する掃討作戦の「成果」報告が九月に予定されており、撤退期限の設定や追加戦費の確保をめぐる議会との攻防が再燃することを踏まえたものです。また派兵の長期化と増派によって、部隊のやりくりに支障をきたしているという軍事的事情もあります。
米ABCテレビは一日、米政府当局者の話として、〇八年二月から部隊の一部撤退を開始し、同年十二月末までに十万人ないしは十三万人にまで縮小するという二つの案が検討されていると報じました。
一部部隊を撤退させる案についてはこの間もいくつか報道があり、米軍の役割をイラク治安部隊の訓練などに限定し、○八年三月までに米戦闘部隊を撤退させるとした昨年十二月の「イラク研究グループ」の提言に沿ったものと受け止められています。ブッシュ大統領は同グループの提言を受け入れず、増派を推進していますが、五月二十四日の記者会見では受け入れを示唆する発言もして、注目されていました。
さらにABCテレビは〇九年以降について、三万から五万人の部隊を五―十年にわたって駐留させることが一つの案となっていることも指摘しました。
これに関連して、ゲーツ国防長官は五月三十一日、ハワイでの記者会見で、在韓米軍がイラクでの長期駐留のモデルとなるとの考えを表明。ホワイトハウスのスノー報道官やイラク多国籍軍のオディアーノ司令官も同様の見解を示しています。
在韓米軍は一九五三年に朝鮮戦争が休戦となって以来、韓国との二国間協定に基づいて駐留を継続しています。ゲーツ氏は「一定規模の米軍が相互に合意した任務をもち、長期にわたって、受け入れ国政府の主権を守るようなやり方で駐留する」ことを考えていると述べました。
ゲーツ氏は「韓国を引き合いに出すのは、一切合切をやり残したベトナムと対比するためだ」と指摘。ベトナムのように敗走するのではなく、米軍がイラクで「安定の力」となることを構想しています。
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