2007年6月6日(水)「しんぶん赤旗」

主張

年金参院審議入り

国の責任で調査し、解決図れ


 先週末の各社の世論調査で、五千万件の「宙に浮いた年金」への政府の対応に国民の強い不信が示されています。政権の対応を評価しない人、国民の不安が解消されないと思う人が七割、九割に上ります。

 年金問題への圧倒的な国民の批判の中で、社会保険庁の解体・民営化法、国民年金法改定、年金時効特例法の法案審議が、参院の厚生労働委員会で始まりました。

歴代厚労相の重い責任

 日本共産党の小池晃議員が指摘したように、政府は二十年も前に年金記録が二重になる重大問題をつかんでいました。今日の事態は十分予測できたはずです。それにもかかわらず政府は、十年前の基礎年金番号導入の段階から現在に至るまで抜本的な対策をとらず、国民に知らせることさえやらなかったのです。

 柳沢厚生労働相も「社会保険庁はもとより厚生労働省の傘下にある。不手際は厚生労働省全体の責任だ」と認めざるを得ませんでした。

 自民、公明は「(基礎年金番号の導入時の)菅直人元厚相の責任は重大」だと責任を転嫁しています。責任逃れをしている場合ではありません。「宙に浮いた年金」記録が五千万件、うち最大で二千八百万件に対応する年金受給者が、受給権のある年金を受け取れないでいます。

 菅氏を含め、公明党の坂口力副代表、柳沢厚労相らをはじめ、歴代の厚生労働大臣の責任が極めて重いことを当事者は自覚すべきです。

 安倍首相は「宙に浮いた」五千万件を「一年で」照合すると明言しました。「一年で」五千万件が解決するかのような言い方ですが、実際に政府が考えているのは基礎年金番号の導入に際してやったことと同じ作業の繰り返しです。年金記録と加入者の氏名、性別、生年月日の三条件が完全に一致したものを同一人物として、本人調査の対象にするというものです。同じ作業の繰り返しでは「宙に浮いた年金」が解決しないことは明らかです。

 しかも、同一人物と見られる記録が見つかった場合でも、本人には記録の存在を通知するだけで、記録そのものは見せないとしています。

 三条件のどれかが一致せず、部分的な一致であっても「同一人物の可能性がある」として、本人に問い合わせをする必要があります。

 柳沢大臣が認めたように、「宙に浮いた年金」の責任はひとえに政府、厚生労働省にあります。政府の不手際で「宙に浮いた」記録なのに、「中身は言えない。あなたが思い出したら返せるかも」というのは、被害者に対する誠実な態度とはとても思えません。

 小池氏の追及に、柳沢大臣は「記憶を呼び起こす“よすが”になることは提供すべく検討する」と答弁しました。可能な限り、本人に年金記録の情報を提供するのは当然です。

 政府が記録を発見できない場合に、被害者である国民に一方的に立証責任を負わせるやり方は直ちに改め、国の責任で問題の解決を図る姿勢に転換すべきです。

問題解決に議論尽くせ

 安倍内閣が「一年で」やるとしている対策の中身は、一年でできることしかやらないという程度の内容にすぎないことが浮き彫りになっています。なにより、社保庁の解体・民営化を強行することは、国の責任まで「消して」しまう最悪の責任逃れにほかなりません。

 議論をふりだしに戻して、宙に浮き、消えた年金の問題を解決するために、国民の前で徹底的に議論を尽くす必要があります。



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