2007年6月6日(水)「しんぶん赤旗」
社会保険庁解体・「公務員改革」・イラク派兵延長
CS放送「各党はいま」 志位委員長が語る(要旨)
日本共産党の志位和夫委員長は五日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、国会最終盤の課題とたたかいの方向について語りました。聞き手は朝日新聞の星浩編集委員。
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「消えた年金」問題――社保庁解体すれば国の責任も宙に浮く
――「消えた年金」問題をどんなふうに整理されていますか。
志位 まず五千万件という宙に浮いた年金記録、つまり持ち主不明の年金記録があるわけです。そのことによって給付が減ってしまうんですね。国民が納めた保険料にふさわしい給付がやられないというのは国家による詐欺ですから、これは絶対に許されない大問題です。
原因と責任ですが、一九九六年に基礎年金番号制度の設計がされ、九七年に実施された。この時期以降の歴代の厚生労働大臣が共同の責任を負っているというのが重大なところです。ですから、(自公と民主は)お互いに責任のなすり合い、泥仕合をやるのではなく、そろって国民に謝った上で、真剣な対策をおこなうことが大事です。
――社会保険庁民営化という話ですが。
志位 これも大問題です。社保庁の改革はもちろん必要ですが、国の機構である社保庁を解体してしまったら、国の責任が宙に浮いてしまう。年金記録が宙に浮いた上に、解決する責任も宙に浮いてしまって、放り投げるということになります。「消えた年金」問題は解決するまで国できちんと責任を負うということをはっきりさせ、社保庁解体・民営化法案はいったん白紙に戻す、年金問題の解決のめどと方策がきちんと立つまでは白紙に戻すということが必要です。
――自民党は社保庁の労働者の怠慢が大きな原因といっています。
志位 これは成り立ちません。「親方日の丸」体質といいますが、問題は「親方」にあります。厚生省(当時)の記録を読みますと、すでに一九八〇年代末の段階で、厚生年金、国民年金で持ち主不明の年金記録があるという記載が出ています。ですから、当時から厚生省は知っていた。しかし国民には明らかにしてこなかった。基礎年金番号に統合するということになったら、宙に浮いた年金が膨大な規模で生まれるとわかっていたはずです。ですから制度設計をやる段階で宙に浮いた年金をどう処理するのかということも組み入れるべきで、やらなかったのは設計者の責任です。もちろん執行者の責任は重い。トップである大臣に責任があり、それを現場労働者に押し付けるのは筋違いです。
「公務員改革」――高級官僚に「特製ハローワーク」をつくるもの
――「公務員制度改革」の本質は。
志位 私たち、これを一言で「天下りバンク」といっていますが、高級公務員の再就職先をあっせんしてやる機構をどうして国がわざわざつくる必要があるのか。再就職を一概に否定しませんが、自分の力でやればいいわけで、国家がそのための機構をつくる必要はさらさらありません。高級官僚天国の新たな仕掛けをつくるというものです。いま、若い方々はハローワークにいっても、日雇い派遣のようなひどいやり方で働かされている状況です。一方で、高級官僚には、「特製ハローワーク」――「天下りバンク」をつくってやろうということですから、国民の理解を得られるどころかまったく逆だと思います。
イラク派兵延長法案廃案に力を尽くす
――終盤国会の重点は。
志位 「消えた年金」、「政治とカネ」、天下りの問題がそれぞれ大事ですが、今日から参院で本格審議が始まったイラクへの自衛隊派兵法の延長問題も、衆院ではドタバタで強行したわけですけれども、非常に深刻な大問題です。
イラクではご承知のようにたいへん情勢が悪化しています。米軍の死者がどんどん増える、国内の治安も悪化の一途です。それなのに、米軍支援のための自衛隊派兵延長、あれだけ大義がないことがはっきりした戦争のための支援をつづけていいのかということは、国会最終盤の大問題です。自衛隊のやっている活動の内容を含めて大問題にして、廃案に追い込むために力を尽くしたい。
――官邸では(「有識者会議」で)集団的自衛権の研究を着々とおこなっていますが。
志位 研究会といってもみんな賛成の人を集めてやっています。四類型といわれるものを見ても、これまでの政府解釈でもできなかった海外での武力行使への一歩ふみだしをすすめるというもので、しかも、かなりイラクを意識したものだという感じがします。“一緒に行動している外国軍が襲われたときに助けに行く”というように、イラク型の先制攻撃の戦争がおきたときに、弾を撃てるようにしようと。いままでは自衛隊を派兵しても一発も弾は撃っていないんです。しかし今度は、弾も撃てるようにしようというのがいまの研究で、これは違憲そのものの海外での武力行使です。
こうしてなし崩し的に解釈改憲でやったうえで、明文改憲でもっとおおっぴらにやろうと、今度は武力の行使も一緒に「肩を並べて」やろうという二段構えの方向であり、絶対に許されません。
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